2011年10月9日(日)「しんぶん赤旗」
メディアも注目
“原発埋蔵金”を除染・賠償に
志位委員長提案に首相「検討」
日本共産党の志位和夫委員長が、7日の野田佳彦首相との党首会談で示した原発災害対策にかかわる財源の提案が反響を呼んでいます。野田首相が提案を検討する立場を示し、メディアもいっせいに取り上げました。これまでタブーとなってきた「原発埋蔵金」にメスを入れるよう求めた提起とは―。
再処理計画やめ、「基金」創設を
党首会談を各紙はいっせいに報じました。
「除染・賠償に原発予算 首相が転用検討を表明」(「毎日」)
「原発予算 賠償に転用も 首相が見直し検討」(「東京」)
「原発関連予算を転用 首相 除染・賠償財源に」(「産経」)
各紙とも志位氏が、電力各社が積み立てている使用済み核燃料の再処理に充てる積立金や、高レベル放射性廃棄物の最終処分のための積立金などを、除染や賠償、廃炉の費用に充てるべきだと主張した点に注目。「これまでの原発関連予算や資金の見直し」(「東京」)や、「国民負担の軽減」(「毎日」)につながると指摘しています。
元は電気料金
党首会談で志位氏は、電力業界は「使用済み核燃料再処理等引当金」をはじめ約19兆円も積み立てようとしているが、この積立金を国が一括して管理する「原発賠償・除染・廃炉基金」を創設してそこに移し、活用するよう求めました。
同時に、電力業界だけでなく原子炉メーカー、大手ゼネコン、大銀行など原発ビジネスで大もうけしてきた「原発利益共同体」に属する大企業にも「基金」への拠出と負担を求めるよう主張しました。
野田首相は「原発関係のお金(積立金)については今後、エネルギー政策全般を見直すなかで洗い出し、洗い出したお金は可能な限り、そちらのほう(賠償と除染)に使っていく」とのべ、「基金」創設の提案を検討する立場を表明しました。
「基金」の実現へ志位氏が活用を求めたのは、「使用済み核燃料再処理等積立金」、「高レベル放射性廃棄物最終処分積立金」、「原子力発電施設解体引当金」のことです。原発と核燃料サイクル計画の推進などに充てることから「原発埋蔵金」とも呼ばれてきました。消費者が支払う電気料金から徴収されており、残高は4兆8000億円にのぼります。(別表参照)
破綻した計画
核燃料サイクル計画は、使用済み核燃料を再処理して取り出したプルトニウムを利用する計画のことです。プルトニムを燃やす高速増殖炉は、使った以上の燃料を作り出せる「夢の原子炉」と宣伝されましたが、失敗に続く失敗で泥沼の袋小路に陥っています。
青森県六ケ所村に建設中の再処理工場は1997年稼働予定が延期されたままです。使用済み核燃料を使う高速増殖炉原型炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)も、95年のナトリウム漏れ事故以来停止。維持費だけで毎日、億単位の金を垂れ流し続けています。
再処理で取り出すプルトニムは発がん性が強く、再処理過程で爆発性が高い物質ができるなど、ひとたび事故が起これば原発事故の比ではありません。
技術・経済的困難のため各国は同構想から次々と撤退していますが、日本だけが50年も先の実用化目標を掲げてばく大な税金を注ぎ込んでいるのです。
危険極まりなく、すでに破綻が明瞭として、日本共産党は中止を求めてきましたが、福島原発事故を受けて中止以外にないことはいよいよ明らかです。
「聖域」にメス
国民から徴収した「埋蔵金」を、福島原発事故の賠償や除染のために使うことは当然のことですが、「安全神話」に浸り、原発を推進してきた政党にとっては聖域になってきました。ここにも、「安全神話」とたたかってきた日本共産党の提起が注目を集めるゆえんがあります。
党首会談で野田首相は、除染費用が2011年度第3次補正予算と2012年度予算で計上する予定の1兆2千億円でも不足するとの見通しを示し、エネルギー政策全般の見直しのなかで原発関係予算について「洗い出さなければならない」とのべました。
政府内では、原発のコストの見直しなどエネルギー政策の見直しに向けた作業が始まっていますが、「原発安全神話」に立ったエネルギー政策ときっぱり決別できるかどうかが問われています。
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