2011年10月9日(日)「しんぶん赤旗」
放射能 除染問題
線引きせず“責任を持つ”
問われる国の姿勢
福島第1原発事故による放射性物質で汚染された地域の除染について、国が責任を持つとする“線引き”が大きな焦点になっています。
環境省は9月27日の環境回復検討会で、面的な除染は年間被ばく量5ミリシーベルト以上の地域だけとし、それ未満は地方自治体に責任を押し付ける方針を表明。翌日の福島県で開いた説明会では、5ミリシーベルト未満の地域は、財政支援の対象外とする方針を示しました。
この方針に地元自治体は、「国は最後まで面倒をみる気があるのか」「これではいつまでも帰還できない」と反発。日本共産党の志位和夫委員長は9月29日に記者会見し、「国の責任を放棄するもの。除染に必要な財政支出は全面的に国が責任を負うべきだ」と厳しく批判しました。
あわてた細野豪志原発担当相は、2日、福島県の佐藤雄平知事に会い、1ミリ〜5ミリシーベルトの地域も国が財政支援を行うことを表明。5日に行われた衆院復興特別委員会では、野田佳彦首相が日本共産党の高橋ちづ子議員に対し、「1ミリシーベルト以上の地域も市町村の行う除染への支援を行う」と述べました。
しかし、そもそも政府の基本方針(8月26日)は、国は「除染に責任を持つ」と言いながら、主体的に除染するとしているのは警戒地域と計画的避難地域だけです。
20ミリシーベルト以下では、市町村の除染を支援するとしているものの、比較的線量が低い区域は、側溝や雨どいなどの線量が高い場所しか除染の必要性を認めていません。
日本共産党は、放射線被ばくについては、「これ以下の被ばく量なら安全」というしきい値は存在せず、「被ばくは少なければ少ないほど良い」を大原則とし、不当な線引きをやめるべきだと主張。放射線量の調査と除染を一体に、国の総力をあげてとりくむことを求めています。
線引き問題について環境省は、「自治体の法律に基づいての除染は、5ミリシーベルト未満の地域でも支援しなければならない」と話します。
しかし、第3次補正予算案で除染費用はわずか2000億円を計上する方向で検討が進められており、野田首相が言明どおり責任を果たすのかどうかが問われます。 (前野哲朗)