2011年10月8日(土)「しんぶん赤旗」
主張
3次補正と概算要求
復興と暮らしを支える予算に
政府は2011年度の第3次補正予算案を今月下旬にも召集する臨時国会に提出します。一方、12年度予算案の各省庁の概算要求もすでに出そろっており、来年度予算の編成も本格化しています。
大震災の復興では不当な線引きで被災者を切り捨てるのではなく、すべての被災者の生活と生業(なりわい)の再建を支援することが必要です。冷え込む暮らしと経済を立て直すには国民生活を優先する経済政策に転換し家計と内需主導の安定成長を図ることが不可欠です。
大企業減税、庶民増税
補正予算の中身を示す前に野田佳彦内閣が財源として打ち出したのは10年間にわたる所得税などの庶民増税です。政府は「負担を分かち合う」として法人税も財源に加えると言っています。しかし、その実態は来年度に法人税の恒久減税を実施した上で、減税の範囲内で付加税を3年間だけ課すという“偽装増税”です。結果として大企業には、3年間は法人税率2%の減税、それ以降は4・5%の大減税となります。
「復興増税」の実際の姿は今後の10年間に国民には約9兆円の増税を押し付け、大企業には11兆円以上の減税を大盤振る舞いする不公平きわまる枠組みです。日本共産党の大門実紀史参院議員の質問に、野田首相も「計算すると、こういう数字になる」と認めざるを得ませんでした(6日、参院・東日本大震災復興特別委員会)。
資本金10億円以上の大企業の内部留保は、この2年間に17兆円も増やして257兆円に上っています。これらの大企業や、ほかの先進国と比べても低すぎる株式配当・譲渡益課税で大もうけしてきた大資産家にこそ応分の負担を求めるべきです。
民主党政権は今年度中に消費税増税法案を提出し、15年ごろまでに消費税率を5%引き上げる方針です。これは1年間で12兆円もの過酷な庶民増税です。「復興増税」と合わせて今後の10年間に国民に70兆円もの増税をかぶせれば、家計と内需への打撃は計り知れません。法人税減税の減収に加えて、大もとの経済が落ち込むことによっても税収が減少し、かえって財政を悪化させます。
各省庁の来年度予算案の概算要求を見ても大企業・アメリカ優先の姿勢は強固です。
経産省は「復興増税」にも関連する法人税率の引き下げを強く押し出しています。文科省などと一緒に、大企業が利用している研究開発減税の上乗せ措置の恒久化(3000億円規模)も求めています。防衛省は米軍「思いやり」予算を増やし、519億円の米軍グアム移転経費、1190億円の「ヘリ空母」を計上するなど米軍優先と軍事費の聖域扱いを続けています。
不急の事業は中止を
野田内閣が来年度予算の目玉にしている「日本再生重点化」枠での各省庁の要求は2兆円規模に膨れ上がりました。そのうち最大の6600億円を占める国交省の要求には大型道路や大規模港湾、国際空港整備などの大型公共事業が並んでいます。防衛省まで「動的防衛力の構築」などの名目で1000億円近くを要求しました。
不要不急の事業をやめ、大企業とアメリカ優先を改めて被災地全体の復興を支え、国民の暮らしを応援する予算に切り替えることが切実に求められます。