2011年10月5日(水)「しんぶん赤旗」
主張
軍事費概算要求
震災復興よそに増額するのか
防衛省は今年度当初予算に比べ0・6%増の4兆6906億円にのぼる2012年度予算の概算要求を提出しました。概算要求の別枠とされる米軍再編経費などを含めると4兆8033億円です。
東日本大震災の復興財源のためといいながら国民に増税を押し付ける一方で、むだの象徴である軍事費を事実上「聖域」扱いにし、大震災で苦しむ被災者を含む国民にしわ寄せするのでは国民の理解を得られるはずがありません。軍事費を削減し復興財源と暮らしに回せという国民の願いに応えることこそ重要です。
突出する海外派兵予算
防衛省の軍事費増の要求は、野田佳彦・民主党政権の日米軍事同盟の強化方針をうきぼりにしています。野田首相は先の日米首脳会談で「日米同盟の深化・発展」をオバマ米大統領に約束しました。軍事費増額はこの対米約束を具体化するものにほかなりません。
概算要求は自衛隊をどこにでも緊急動員する「動的防衛力」構想のもとに「軍事対抗主義」を前に押し出しているのが特徴です。
海外での戦争への備えとして1190億円もするヘリ搭載護衛艦=ヘリ空母をまた導入します。保有が4隻と決まっているヘリ護衛艦すべてを大型化し、十数機のヘリを搭載するものへと置き換えることで海外での作戦能力をさらに強めるのが狙いです。2機で333億円もする次期輸送機(C2)を取得するのも「国際平和協力活動等」(防衛省)を行う際の輸送力強化が目的です。日本の「域外作戦能力を向上させていく」と明記した米国防総省の11年版「米国家軍事戦略」にそったものであるのも明らかです。
北朝鮮や中国の「脅威」を口実にした日本の「南西地域」などの軍事態勢強化も重大です。与那国島住民の反対を無視して「沿岸監視部隊」を配置するための土地代15億円を計上し、絶えず上空から監視する早期警戒機(E2C)の那覇基地配備のために2億円をつけるなど、東シナ海への軍事対応がむきだしです。これでは周辺諸国との緊張を高めることにしかなりません。軍事には軍事で応える「軍事対抗主義」では真摯(しんし)な話し合いもできません。憲法9条を生かした外交力こそ必要です。
在日米軍への「思いやり予算」は今年度予算より57億円多い1919億円を計上しています。「思いやり予算」廃止の国民の声をふみにじるものです。沖縄の普天間基地「移設」関係予算も前年度と同額の1470億円とされています。普天間基地の県内「移設」に反対し普天間基地の閉鎖・撤去を求める県民の心をもてあそんでいるとしかいえません。アメリカいいなりの概算要求を認めるわけにはいきません。
宇宙の軍事利用予算も
見過ごせないのは宇宙の軍事利用のための予算です。今年度の611億円が2609億円にもなっています。通信衛星の後継衛星の整備などで宇宙の軍事利用に拍車をかけるものです。宇宙の軍事利用を禁止した国会決議(1969年)にも違反しています。概算要求が宇宙開発を大もうけの対象にしている財界・兵器産業いいなりの予算であるのは明白です。
平和と生活を守るためには、「アメリカ直結」と「財界直結」の姿勢を正すことが不可欠です。