2011年10月5日(水)「しんぶん赤旗」
郵便局の車両整備代払って
下請けの業者が悲鳴
8月分の整備代金9割が未払いだ―。郵便配達車両を点検・整備する全国の中小零細業者が悲鳴をあげています。郵便事業会社(東京都)から車両保守業務を委託された元請け会社が、下請け業者への支払いを遅らせているためで、郵便事業会社の監督責任も問われます。 (遠藤寿人)
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元請けにトラブル? 郵便会社の責任も
「電話しても出ないし、出ても『支払い計画ができていません』じゃ話にならない。俺たちの金をどうしたんだ」と怒るのは、長崎県の自動車修理工場経営者です。
支払いを遅らせている元請け会社とは「ITカーズ株式会社」(東京都)。2010年4月から郵便事業会社と、「随意契約」で委託契約を結んでいます。同社は「資金調達に際し悪質な小切手詐欺事件に巻き込まれ」たと主張。11年8月分の1割を9月5日に払うと、残り9割は「3ヶ月以内」としています。
全国の郵便事業支店(1110店)は、バイク9万台、軽自動車2万8千台、トラック3000台を保有しています。
現場で点検・整備を行うのは、ITカーズと契約を結んだ、約7000店の下請け業者で「保守店」と呼ばれています。
関西地方で30年以上の保守店経営者は「支払われたのは1割の20万円だけ」と不満をぶつけます。
前出の長崎県の経営者は「うちは家内工業。資金繰りが大変だ。ブレーキシューやオイルなど細かい部品は現金払いだから。パンクは現場で直す。在庫も必要になる。ITカーズになって出張費も工賃も減った」とこぼします。
9月分の保守料はITカーズに代わって郵便事業会社が、保守店に直接払うことになりました。しかし、同社は8月分の残りについて「(ITに)早く払うよう要請しているが、会社の中で、何が起きているのか実態が分からない」と無責任です。
郵便事業会社によると、車両保守業務の委託契約料は、2007年度約71億円、08年度約75億円、09年度約93億円、10年度は約90億円です。ITカーズが契約した10年度は3億円減っています。
同社は「ITカーズ以外、参入を呼びかけたが応じるところがなかった。ITカーズとは適切な契約をしてきた。決して民営化の影響ではない。現場の保守店の不満や苦情はあくまでもITとの契約の問題」と“関知しない”との回答でした。
9月30日、日本共産党の赤嶺政賢、塩川鉄也両衆院議員、山下芳生参院議員が、郵便事業会社に、未払い分を自社の責任で支払うよう要請しました。
民営化でもうけ本位に
郵政産業労働組合の山崎清顧問の話 民営化でもうけ本位になり人件費や調達コストの削減が支店レベルから厳しく求められている。そのもとで事業会社本社が詐欺にだまされるような安易な会社と随意契約を結び未払い問題を起こした。監督責任が問われてしかるべきだ。バイクや車両の故障は集配の遅れを招き、故障や事故は命の危険にもつながる大問題だ。
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