2011年10月4日(火)「しんぶん赤旗」
主張
パレスチナ問題
入植の停止こそ交渉の入り口
国連へのパレスチナによる独立国家の承認申請をめぐるこの間の動きは、中東和平の障害のありかを改めて明らかにしています。
パレスチナの独立国家建設は長年踏みにじられてきた民族自決権を実現する正当な要求です。第3次中東戦争(1967年)以前の境界を国境とする国家建設を、との主張は国連諸決議に合致するもので、イスラエルとパレスチナの平和共存による中東和平にとって核心です。一方、イスラエル現政権は新たな障害までつくりだしてパレスチナ占領を正当化し、和平を追求する意思のなさを浮き彫りにしています。
新たな障害までも
国連演説でパレスチナのアッバス議長は、「(イスラエルによる占領地への)入植活動こそパレスチナ人の土地の植民地主義的軍事占領、パレスチナ人への野蛮な攻撃と民族差別の根幹をなすものだ」と批判しました。これに対しイスラエルのネタニヤフ首相は、アッバス発言はイスラエルの存在を否定するものだと事実をねじ曲げ、「入植は紛争の結果だ」と述べて嘲笑しました。
イスラエル政府とパレスチナ解放機構(PLO)が互いに承認し合い、占領地でのパレスチナ暫定自治と最終的な将来を決める交渉の枠組みを定めた「オスロ合意」から、今年で18年になります。「5年以内」とされた交渉はしばしば暗礁に乗り上げました。
最大の要因は、イスラエルで合意当事者のラビン首相が95年に暗殺された後、政治の右傾化が進むなかで、イスラエル政府が国際法違反の入植を強行し続けてきたことにあります。占領地への入植拡大はパレスチナ住民を暴力で追い立て、独立後のパレスチナ領土を奪い取るものです。イスラエルが入植拡大をやめることこそ、交渉の再開と前進の最低条件です。
その最低条件をイスラエルが拒否していることが交渉の障害です。首相と同じ政党に属し国防相などを歴任したモシェ・アレンス氏はイスラエル紙への寄稿で、67年境界を交渉の基礎として認めたり、入植を「凍結」するなどの譲歩を一切しなかった、と首相の国連演説を称賛しました。
このさなかにイスラエル政府がパレスチナ国家の首都となるべき東エルサレムへの大規模入植計画を承認したことは、交渉拒否を宣言したに等しいものです。
パレスチナの国連申請に先だってイスラエルのリーベルマン外相は、申請をイスラエルが「強力な反撃」に出る好機とし、「オスロ合意」を破棄し、パレスチナ領となるべきヨルダン川西岸の少なくとも一部をイスラエルに併合するよう、首相に求めました。パレスチナ独立国家を拒否し、和平を拒否する右翼の立場が鮮明です。
イスラエル擁護する米
米国は国連申請を拒否する一方で、パレスチナに「前提条件なしの交渉」を迫っています。それこそがイスラエルの主張にほかなりません。パレスチナが、入植活動を停止することが交渉の前提だと主張するのは当然です。
オバマ米大統領は5月、「国境は67年境界を基礎に」と述べたものの、イスラエルの反発を受けて立場を後退させました。米国自身が真剣な和平追求の立場に立つことこそ、「交渉による解決」との主張を生かす唯一の道です。
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