2011年10月3日(月)「しんぶん赤旗」

主張

暴力団排除条例

「社会のダニ」追放への合意を


 東京都と沖縄県で1日から「暴力団排除条例」が施行され、全国47都道府県すべてで、同様の条例が出そろいました。自治体が結ぶ契約から暴力団関係者を排除し、事業者が暴力団に利益供与することを禁止するなどの内容です。

 暴力団は、常態的に犯罪行為を繰り返し、市民生活を脅かす反社会勢力です。一つの条例で根絶できるほど生易しい集団ではありません。条例が乱用され市民の権利が侵されるようなことがあれば、かえって逆効果にもなりかねません。いまこそ暴力団追放への大きな社会的合意を広げるべきです。

「甘さ」一掃すべき

 暴力団の資金源は、麻薬、賭博、恐喝をはじめ、ヤミ金融や振り込め詐欺など広範囲にわたります。暴力で市民、民間会社、行政を威迫し、不当な利益を得て、社会全体に大きな害悪を与えています。

 金の匂いさえすれば時と場所を選ぶこともありません。東日本大震災の被災地では、指定暴力団山口組元組員が被災者向けの緊急小口融資を詐取(宮城県)、同住吉会系暴力団幹部が仮設住宅建設現場に違法派遣(岩手県)など、震災復旧・復興事業まで食い物にしています。東京電力福島第1原発の収束作業にあたる作業員の「人出し」にも暴力団が手を出しているとされ、東電は7月に「暴力団排除」を宣言したほどです。

 まさに「社会のダニ」である暴力団の構成員、準構成員が8万人を数え、その勢力を一向に衰えさせていないことの異常を、直視しなければなりません。

 最近もタレントの島田紳助氏が、山口組幹部との親密交際の発覚で「引退」しました。大相撲の暴力団汚染も表面化しました。長く続いてきた芸能界などと暴力団の癒着は断ち切られていません。金融業、建設業、労働者派遣事業、風俗営業など、暴力団の進出がすすみ「腐れ縁」とも呼ぶべき関係が認められる分野もあります。

 全国の「排除条例」では、事業者が暴力団を利用したり、利益供与することを禁止し、違反した場合は罰則を科すことになりました。警察は事業者に報告や資料提出を求め、立ち入り調査する権限を付与されます。暴力団と関係のない事業者や住民が自由や権利を侵されることがない慎重な手続きが必要です。条例は、だれもが暴力団を「恐れない」「金を出さない」「利用しない」道をとるのを励ますように運用されるべきです。

 暴力団は1980年代のバブル期の地上げなどで大企業や政治家との癒着を強め、多くの政治家と暴力団の交際も表面化しました。現政権でも、野田佳彦首相、蓮舫行革相、前原誠司民主党政調会長に、覚せい剤事犯で山口組組員とともに逮捕された経歴を持つ人物からかつて資金提供があった事実が明らかになっています。「道義的な観点から返金した」(野田首相)という弁明だけですむ問題ではありません。

弱体化、壊滅目指せ

 日本社会には、暴力団を「必要悪」と認めるような見方もあります。暴力団の害悪が深刻化し、暴力団対策法が成立した91年、当時の警察庁刑事局長は「暴力団そのものを社会に存在を認めない、壊滅する」と明言しました。

 その言葉通り、暴力団排除と弱体化、壊滅への道を確実にすすめることが必要です。





もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp