2011年10月2日(日)「しんぶん赤旗」
主張
原発「やらせ」
癒着続け規制の役割果たせぬ
国が主催する原子力発電についてのシンポジウムなどで、経済産業省の原子力安全・保安院や資源エネルギー庁が電力会社に働きかけて、賛成の立場から参加し発言するよう仕向けていたことが、同省が設置した第三者委員会の最終報告書で明らかになりました。法律にもとづいて原発の事業者を規制する立場の安全・保安院や電力会社を監督するエネ庁が「やらせ」を指示していたのは重大です。こんな癒着が常態化していたのでは、国民の安全を守る立場での行政は実行できません。
「もたれ合う」関係
経産省第三者委員会の調査は、今年6月九州電力玄海原発でおこなわれた国主催の公開放送で、九電による「やらせ」の投稿が発覚したのを受け、過去5年間、国主催のシンポジウムなどが開かれた七つの電力会社(関西、北陸を除く)を調査したものです。その結果、北海道、東北、中部、四国、九州の五つの電力会社で開かれた七つのシンポジウムなどで、国が関わった「やらせ」が明らかになりました。調査は一部であり、文字通り“氷山の一角”です。
その内容は、電力会社に対し保安院が、「電力会社の関係者もどんどん参加して意見を述べなさい」と発言するなど、まさに指示そのものです。発言要領などを準備し出席者の発言を組織するよう求め、会場がいくつかのブロックに分かれている場合は電力会社の参加者を各ブロックに配置し、賛成意見が満遍なく出るよう求めるなど、至れり尽くせりです。
調査では保安院だけでなく資源エネルギー庁もエネ庁主催のシンポジウムで電力会社に「やらせ」を働きかけていたことが明らかになっています。まさに「やらせ」は経産省ぐるみです。報告書は経産省と電力会社との「もたれ合う関係」が「不適切な行為の大きな一因」と批判していますが、原発建設を推進する政府と電力業界の醜い癒着は大問題です。
安全・保安院は、原発の安全を確保するため電力会社を規制する立場です。国主催のシンポジウムは、耐震性やプルサーマル発電など原発に対する国民の不安にこたえるためです。そのシンポジウムで保安院が電力会社に指示して「やらせ」を行うなど言語道断であり、保安院の規制がまったく名目にすぎないことは明らかです。
今回の調査の発端となった玄海原発の公開放送では、エネ庁の説明はあったものの「やらせ」指示があったとは認めませんでした。しかし過去の国主催のシンポジウムでは玄海原発でも「やらせ」指示を認めています。九州電力が自ら第三者委員会を設置して行った調査では佐賀県知事の働きかけが明らかになり、九電の調査報告は首長との不透明な関係を絶つよう求めています。保安院はもちろん自治体も癒着の根を絶たない限り、住民の安全は守れません。
原発の再稼働は論外
問題の根本には原発を規制する保安院が原発推進の経産省の一部局とされ、規制機関がその役割を果たしていないことがあります。規制機関を確立しない限り、原発の安全性など確保できません。
定期検査で停止中の原発の運転再開が問題になっていますが、原発事故の原因究明も尽くさず、規制の体制も確立しないで再稼働を急ぐなど、まさに論外です。