2011年10月1日(土)「しんぶん赤旗」

きょうの潮流


 どうして、世の中にこんなものがあるんだ! わさびを初めて食べた時の衝撃をいま振り返れば、こんな気持ちだったかもしれません▼なにも知らない無邪気な子どもが、いきなり脳天を突き抜けるような刺激に襲われたのですからたまりません。周りのおとなは、笑ってみている。あの体験は、子どもがおとなへ成長してゆく中でのささやかな「通過儀礼」だったようです▼ワサビとの出会いは、もっと前でした。初めてみたワサビ自生地。近寄るのが怖いほど険しく、周りから隠れた谷でした。冷たい水が滑り落ちる秘密の谷。ワサビは、日本原産の植物。あれは、日本の原風景の一つだったのでしょう。「水清く山葵(わさび)はかなくて人に辛し」(山口青邨(せいそん))▼わさびの力を生かした日本人が、ことしのイグ・ノーベル賞化学賞を受けました。今井真・滋賀医大講師ら7人です。わさびのにおいを使い耳の不自由な人に火災を知らせる、警報装置を開発しました▼イグ・ノーベル賞は、笑いを誘い、そして考えさせる研究に贈られます。たしかに、考えさせられました。警報ベルが聞こえない人は、火事の時どんな危険にさらされてきたのだろう。さらには3月11日、津波からの避難を促す放送が聞こえなかった人たちは…▼東日本大震災では、心身に障害をもつ人の死者・不明者の割合が2%にのぼる、といいます。障害をもたない人の場合の約2倍。災害列島に住む災害弱者の、生命の重みと、それが軽い現実も考えさせるイグ・ノーベル賞です。





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