2011年9月28日(水)「しんぶん赤旗」
電力総連・定期大会
原発 再稼働へ企業と一体
「推進」消えたが…
東京電力など電力企業の労働組合でつくる電力総連(種岡成一会長、約22万人)は、6、7の両日、名古屋市内で定期大会を開きました。企業と一体となって原発を推進してきた同総連が、東電福島原発事故をうけてどんな方針を出すかが注目されました。
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半世紀ぶり
大会のもっとも大きな変化は、これまで掲げてきた「原発推進」の表現が運動方針から消えたことです。1956年以来、半世紀ぶりといいます。放射性物質による汚染被害が拡大し、収束の見通しもたたない深刻な状況を前にして、相変わらず「推進」を主張したのでは国民感情が許さないという判断だといわれています。
種岡会長は、大会のあいさつで、原発の「推進」は口にしませんでしたが、強い調子で必要性を訴えました。「自然環境に大きく影響される太陽光や風力による発電は、そのコストも含め、すぐにベースロード(主要な)電源とはなりえないと考えます。原子力は、現時点では、電力の安定供給のためには必要な電源であると認識しています」とのべました。そして、安全確認、地元住民の理解を前提に、定期点検中の原発を「再稼働させていただくために」組織をあげて取り組むと強調しました。
原発再稼働は、原発推進を公然とは口にできない財界などの「原発推進派」が、ここを突破口にしようと強めている主張です。連合内でも基幹労連、自動車総連などがこれに呼応しています。野田佳彦首相も13日、国会の所信表明で、まともな安全対策がないまま「定期検査後の再稼働」を強調しました。
原発から撤退して再生可能エネルギーへの転換を求める世論が高まり、いま全国的に集会や宣伝、デモ行進がとりくまれていますが、原発再稼働を許すか、阻止するかは当面の重要な対決点になってきています。
東電を擁護
大会のもう一つの注目点は、原発事故の損害賠償について、露骨に東京電力擁護の方針をかかげたことです。
運動方針は、損害賠償について「補償に万全を期す」とのべつつ、「原子力事業の健全な発達に資するという原子力損害賠償法の趣旨に則った対応」を主張しています。
「法の趣旨」というのは、電力会社の賠償責任範囲(1200億円)を超えたり、「異常に巨大な天災地変」のときは国が援助するという条項をとらえて、東京電力の賠償責任を軽くしようという主張です。
いま電力総連と組織内国会議員は、この原賠法をもちだして東電をかばい、必死になって損害賠償は国の支援でと主張しています。
たとえば関西電力出身の藤原正司参院議員は、「災害の原因を一民間企業に押しつけ何千年に一度といわれる地震と津波が今次災害の最大の原因(犯人)であることを忘れてはいけない」(同氏のホームページ)といいたい放題です。
また同組織内の衆・参国会議員をあつめた同総連の「明日の環境とエネルギーを考える会」の会合が5月17日に開かれ、幹事長である藤原議員は「原子力災害は、無過失責任による損害賠償であることをまず認識することが大事」と、東電に責任がない賠償だと強調しました。
国民の被害の補償より企業を守るという、東京電力が口が裂けてもいえないことを労働組合が代弁する―労使一体化路線の害悪の典型といえる動きです。