2011年9月28日(水)「しんぶん赤旗」
主張
予算委原発論戦
国の責任果たさせることこそ
東日本大震災の復旧・復興とともに、東京電力福島原発事故の収束と福島の再生が、「内閣としての最優先課題」だと繰り返す野田佳彦首相。ようやく始まった衆院予算委の論戦で日本共産党の志位和夫委員長は、原発事故にともなう放射能汚染から国民を守る問題や被害の賠償、停止中の原発の再稼働問題、原発からの撤退などについて首相をただしました。
事故から半年過ぎ、避難生活を続ける住民の暮らしはもはや限界です。住民の不安を解消するため、放射能の除染でも被害の賠償でも、政府が責任をもって、被災者の声に応えることが求められます。
除染や賠償進めるには
「台風15号が去り、きょうは秋晴れの空が福島に広がっています。こんな気持ちのいいはずの日でも、福島市内では子どもたちの遊ぶ声がしません。野田首相、福島に住んでみたらどうですか?」
野田首相が先週、国連の会合で原発依存を表明したのに対する、福島のお母さんの声です(本紙24日付)。住民を苦しめているのは、事故収束のめどが立っていないことに加え、広範囲に広がった放射性物質による汚染で命と健康が脅かされていることです。
志位委員長の質問に、首相も放出された放射性物質がセシウム換算で広島型原爆の168倍にのぼることを認めました。専門家の調査では汚染は福島だけでなく、北は岩手から南は千葉、埼玉、神奈川まで広範な地域に及びます。
ではなぜ除染が進まないのか。志位委員長が自治体首長などの声を紹介したように、政府が福島以外の自治体に「除染」の情報さえ知らせず、最終処分の展望も示していないため、取り除いた土などを保管する自治体の「仮置き場」が決まらず、除染費用も自治体だけでは負担できないからです。
「除染は国の責任で」と迫る志位委員長。被災者の切実な声です。野田首相も「国の責任」は否定せず、「仮置き場」の期限明示をという追及に、明示できるよう努めたいと答えました。自治体への財政支援など、問題は山積しています。自治体任せの姿勢を大本から改めさせることが不可欠です。
原発事故は、被害の賠償も大問題です。いま被災者の間で怨嗟(えんさ)の声が巻き起こっているのは、東電が示した賠償手続きが複雑で、対応しきれないことです。「160ページの説明書を読み、60ページの請求書を書くなんてとてもできない。賠償を請求するなというのか」
志位委員長が「加害者」としての認識はあるのかと迫ったのに東電社長はしぶしぶ認めました。しかし、原発事故が“人災”だったとは明言しません。心からの反省がないから苦しみに追い打ちをかけるのです。背景には「被害のすべてが賠償の対象になるものではない」と、「全面賠償」に否定的な政府の態度があります。方針そのものの見直しが求められます。
原発撤退を決断して
事故の対策も進まないのに、野田政権は原発再稼働に踏み出そうとしています。志位委員長は、事故原因の検証が途上であり、「安全」を確保する体制さえないことをあげてきびしく批判しました。
首相は事故の究明が「大前提」とのべました。究明抜き、規制機関なしの再稼働はありえず、原発からの撤退こそ、被災者の切実な願いに応えたことになります。