2011年9月27日(火)「しんぶん赤旗」
きょうの潮流
同僚記者から、アメリカの音楽グループ、ピーター、ポール&マリーの歌を勧められました。かつてベトナム戦争に反対したグループ。「500マイル」「パフ」などの曲名に懐かしさを感じる世代もいるでしょう▼「聴いてみたら」と言われたのは「パワー」という曲です。力強いコーラスがとても印象的な歌です。パワーは力や電力を意味します。歌で繰り返されるのは、太陽、滝、生きもの、風など、自然の恵みがもたらすパワーを下さいと。そして、原子力の「毒」は持ち去ってと願うのです▼福島第1原発の事故から半年以上過ぎました。しかし、事故の収束の見通しは立っていません。環境中に放出された大量の放射能は、多くの人たちに苦難と不安を強いています。将来への希望さえ奪っています。まさに「毒」のパワーです▼曲はミュージシャンのジョン・ホールがその妻と作ったものです。1979年3月、アメリカ・ペンシルベニア州のスリーマイル島原発の事故が起きました。ジョン・ホールは同じ年に、ニューヨークで開かれた「反核」コンサートで、他の音楽家と一緒にこの曲を歌っています▼曲が問いかけるのは、選ぶのは私たちということです。太陽光、水力、風力といろいろなパワーがあるのに、「毒」のあるパワーを選ばなくてもいいのではと。30年以上も前の曲ですが、今に通じる切実なメッセージです▼今回の事故がもたらした現実を見据えるなら、政府に決断を迫るしかありません。原発の速やかな撤退へ、です。