2011年9月23日(金)「しんぶん赤旗」
きょうの潮流
3月11日につづき、ことし2度目の“帰宅難民”か。そう覚悟したころに電車が動き始め、なんとか家にたどりつきました▼駅から10分あまり歩く道すがら、折れた木の枝が散らばり、壊れて打ち捨てられた傘は6本を数えました。ほとんどが、コンビニで売られているビニール傘です。台風15号は、雨、風とも大暴れでした▼震災や台風12号の被災地は避けて通ってくれ。と願っても、台風に思いは届きません。床上まで浸水した仮設住宅。「もう逃げるところはない」と嘆く震災被災者。またもや水浸しの石巻の街。テレビでみていて、胸がしめつけられるような気分になりました▼列島中どこもかしこも、水、水、水…。台風は、どれほどの量の水を降らせるのか。1976年の17号台風の記録があります。834億トン。琵琶湖がためる水の3倍にあたります。17号台風は、1万1千棟以上の家を壊し、44万棟を超える家に浸水させました▼魚や海藻の生命をはぐくみ人に恵みをもたらす海の水が急に津波と化すように、人の暮らしや農耕に恵みの雨を降らす台風が人の命と財産を脅かす。私たちが日本列島に生き続けようとするなら、どうしても避けられない現実です▼しかし、国の防災対策が貧しいばかりか、自然災害に対する国土の抵抗力が落ちているようです。荒れる森林。乱開発で傷だらけの山野。水を流し込むアスファルトとコンクリートの街。もう、便利だけれど抵抗力の弱いビニール傘のような国土をつくってはいけません。