2011年9月23日(金)「しんぶん赤旗」
主張
日米首脳会談
直結外交で国民犠牲続けるか
政権発足後初めて訪米した野田佳彦首相が、オバマ米大統領と会談しました。首相が日米同盟を「深化・発展させる」とのべ、焦点の沖縄の米海兵隊普天間基地の「移設」問題でも「日米合意に従い進めていきたい」と約束したのは重大です。
オバマ大統領はアメリカいいなりの首相の足元をみて、「結果が必要だ。これからの進展に期待している」とくぎを刺しています。「アメリカ直結」では、普天間基地の閉鎖・撤去を要求する県民の総意をふみにじり、県民に重圧を押し付けることにしかならないのは明らかです。
異常な対米従属姿勢
野田首相とオバマ大統領の会談では環太平洋連携協定(TPP)への参加や、アメリカが要求する牛肉の輸入拡大なども取り上げられ、野田首相はTPP参加で早期に結論を得ることなどを約束しました。野田首相には、異常な対米追随を改める姿勢はまったくありません。
それどころか、民主党政権の下での対米公約の実行の遅れにいらだつオバマ政権の不満にすすんで応え、米政権の歓心を買おうという態度が露骨です。国連総会出席のために訪米した首相が、訪米の初日にオバマ大統領との会談に臨んだのは象徴的です。
野田首相は就任いらい普天間「移設」を「日米合意を踏まえて進める」とくりかえしています。所信表明演説で「移設」に反対なら普天間基地を「固定化」することになると沖縄県民を脅し、欠陥が明らかでやり直しが求められている環境影響評価の再開をこれみよがしに通告しています。「移設」を実現するための新たな沖縄関係閣僚会合も立ち上げました。
オバマ大統領がそうした野田首相に「結果が必要だ」といったのは、あからさまな威圧です。まともな国家間の外交では通用しないものです。野田首相が首脳会談後の記者会見で「信頼関係を築くいいスタートが切れた」とのべたのは独立国の首相としての自覚に欠けた態度というほかありません。
アメリカいいなりのTPP参加が日本の農業をさらに破壊することも明白であり許されません。
沖縄県民は1996年の日米特別行動委員会(SACO)合意が、当然返すべき普天間基地の返還に基地「移設」の条件をつけて以来、15年間にわたって新基地建設のための杭(くい)1本打たせていません。普天間基地の県内「移設」に反対し、基地の即時・無条件の閉鎖と撤去を求める声は県民の総意になっています。普天間基地の県内「移設」に反対し撤去を求める声は全国に広がっています。
野田首相にはこうした県民・国民の声をアメリカに伝えるほどの気概もなかったのか。アメリカの“御用聞き”のようにふるまうだけの態度は嘆かわしい限りです。
普天間基地は国外に
野田首相の訪米と前後してアメリカを訪問した仲井真弘多沖縄県知事は、県内に「移設」を受け入れるところはないと述べ、基地をつくったときのように「銃剣とブルドーザー」で押し付けるつもりかと発言しました。野田首相は、沖縄県内だけでなく、日本国内に新たな基地を受け入れるところはないと明言すべきでした。
政府に「日米合意」を白紙撤回させることがいよいよ重要です。