2011年9月23日(金)「しんぶん赤旗」
首相が原発推進表明 国連会合
“安全性を最高水準に”
再稼働・輸出を念頭
【ニューヨーク=田中一郎】野田佳彦首相は22日、国連本部で開かれた原子力安全に関する首脳会議で演説し、現在停止中の原発の再稼働や海外輸出を念頭に、「日本は原子力発電の安全性を世界最高水準に高める」と述べ、新たな「安全神話」をふりまくとともに、原発推進路線を表明しました。
再稼働を急ぐ電力会社や原子炉の海外輸出に執念を燃やす原発メーカー、日本に対して「最高水準の安全性」を求め続けてきた米側の意向に沿ったもので、原発の廃止・縮小を求める国民世論に真っ向から反するものです。
首相は演説で、東日本大震災に伴う福島第1原発の事故について「事故当初に比べれば、放射性物質の放出量は400万分の1に抑えられている」として、年内の原子炉の「冷温停止」を目指す考えを表明。さらに、「日本は原子力利用を模索する国々の関心にこたえる」として、「新興諸国」への原発輸出を念頭に置いた「原子力安全の向上」を進める考えを示しました。
福島第1原発事故については、「津波への備えに過信があったことは疑いがない」と述べ、「事故の教訓を世界に発信する」と述べました。一方で、「何より急がれるのは内外で原発安全性の総点検を進めることだ」と原発利用の立場を表明。また、来年4月をめどに「原子力安全庁」を創設する方針を説明しました。
首相は13日の臨時国会所信表明演説でも原発推進路線を明確にしたものの、「中長期的には、原発への依存度を可能な限り引き下げていく」と述べていました。しかし、国連演説では、「中長期的なエネルギー構成の在り方についても、来年夏をめどに具体的な戦略と計画を示す」と述べるにとどまり、エネルギー構成の中での原発の比重について、いっさい言及しませんでした。