2011年9月22日(木)「しんぶん赤旗」

主張

政府円高対策

財界直結が悪循環を深刻に


 野田佳彦内閣が20日、経済情勢に関する検討会合を開き、「円高への総合的対応策」の中間報告を取りまとめました。

 検討会合で野田首相は「産業空洞化回避はわが政権にとって最重要課題だ」とのべました。古川元久経済財政相は記者会見で従来の円高対策との違いを強調しています。「今回は痛みの緩和のみならず為替水準に左右されない強靭(きょうじん)な経済構造に変えていくことに力を入れる」「円高メリットの活用を盛り込んだ攻めの姿勢だ」―。

「円高体質」強める矛盾

 「産業空洞化」や「強靭な経済構造」の対策として中間報告が掲げたのは、大企業への立地補助金の拡充や法人税率引き下げなど財界いいなりの大企業応援策です。他方で円高で最も深刻な被害を受けている中小零細企業への支援策は従来型の融資策など、おざなりの対策にとどまっています。「円高」対策としてはあまりにもお粗末です。

 過去二十数年来、日本経済は何度も円高に襲われてきました。一時的には円高が弱まっても、時がたてばさらに厳しい円高が襲来することの繰り返しでした。

 その根本には日本の大企業の輸出競争力の異常な強さがあります。大企業は円高が進むたびにリストラ・人減らし、賃下げを強行し、下請け単価を買いたたいてコストを削減してきました。労働者と中小企業にしわ寄せしていっそう「国際競争力」を強め、円高のもとでも輸出を増やし、それが新たな円高を招くという「円高体質」をつくっています。

 大企業に資金援助し、税金を引き下げて「国際競争力」を強化する対策は、貿易黒字を増やして一段と円高圧力を強めます。円高で加速する「産業空洞化」への対策だといいながら、円高の悪循環を悪化させる根本矛盾です。

 しかも、「円高メリット」を徹底活用するとして、ドル・ユーロ安で割安になっている海外企業の買収などに資金を供給するとしています。これでは大企業の海外移転を促進するだけです。

 肝心の急激な円高そのものについては「必要な時には断固たる措置を取る」として、政府・日銀が為替市場に介入する姿勢を示しているにすぎません。

 今回の急激な円高は、日本経済の「円高体質」に加えて、欧米の財政・経済危機が深刻化し、相対的に安全とみられた円に投機資金が群がって起きています。円売り・ドル買い介入は一時的に円高をけん制する効果しかないばかりか、国内にためこんだドルと、その運用手段にしている米国債をさらに積み上げます。ドルや米国債が下がれば膨大な損失を抱える危険を増幅します。

内需主導の日本経済に

 「為替水準に左右されない強靭な経済構造」のためには輸出依存の成長路線を改め、内需主導に根本転換することです。労働者派遣法を抜本改正し、正社員が当たり前の社会をめざす、最低賃金を大幅に引き上げ、大企業と中小企業との対等な取引ルールを確立するなど、大企業がためこんだ巨額の内部留保を国内還流させる手だてを取るべきです。内需の活性化は空洞化対策としても有効です。

 同時に、国際的な為替の投機取引を規制する取り組みを開始するよう世界各国に働きかけることこそ日本政府の責任です。





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