2011年9月21日(水)「しんぶん赤旗」
きょうの潮流
会場からあふれ出て延々とつづく、「さようなら原発5万人集会」の行進。数メートル先をゆく男性のTシャツの背中に、こんな文句が刷り込まれていました▼「一筆啓上/炉の用心/汚染増やすな/牛肥やせ」。「炉」は原子炉でしょう。徳川の家臣・本多重次が妻に書いた手紙の「馬肥やせ」の馬を牛に変え、農家の妻あての“替え歌”に仕立てたようです▼しかし、「炉の用心」や「おせん泣かすな」ならぬ「汚染増やすな」は、農家が注意しても自分では手に負い切れない話です。やはり、福島第1原発の場合は東京電力に一筆啓上しなければなりません▼「東京電力 原子燃料サイクル部部長」。蓮池透さんのかつての肩書です。蓮池さんは1977年、東電に入りました。弟の薫さんが北朝鮮に拉致される1年前です。32年勤め、2回赴いた福島第1原発で合わせて5年半働きました。社員の中でも被ばく量は多い方だった、といいます▼最近著した『私が愛した東京電力』で、32年を振り返って書きます。「原発はフェイドアウト(徐々に終わらせる)するしかない」と。東電時代から、「原発は自滅するな」と思っていました。核のゴミ捨て場があるのか。使用ずみ核燃料の行き場所がなくなったら、新しい燃料が入らない。発電できないではないか▼そこで、期限を区切ってのフェイドアウト。当然ながら、「徐々に」では生ぬるい、という人はいるかもしれません。ともあれ確かなのは、火元を断つことがいちばんの「炉の用心」です。