2011年9月20日(火)「しんぶん赤旗」
普天間「進展」演出に躍起
野田政権に危機感
米議会の動き 念頭に
止まっていた時計の針を、再び動かそうとしている―。沖縄・普天間基地(宜野湾市)「移設」問題での野田政権の対応です。(竹下岳)
政権発足直後の1日、防衛省の中江公人事務次官が名護市辺野古への「移設」の前提条件となる環境アセスメントの「評価書」を年内に提出する方針を沖縄県側に伝え、16日には沖縄関係閣僚会合を開くなど、具体的な動きを見せています。21日の日米首脳会談では、野田佳彦首相とオバマ大統領は辺野古「移設」をあらためて確認する方針です。
予算から却下
これらは米議会を念頭に置いた動きです。
米上院は7月、オバマ政権が要求した在沖縄海兵隊のグアム移転費約1億5600万ドル(約124億円)を2012会計年度予算から全額却下しました。その際、上院歳出委員会はグアム移転の「前提条件」となる普天間基地「移設」について、来年5月25日までに進展状況や将来展望を報告するよう求めました。
予算編成権を持つ米議会では、厳しい財政事情の中、巨額の経費がかかる海兵隊グアム移転計画に否定的な見方が強まっています。
米議会が国防総省に提出を要求しているグアム移転の最終計画(マスタープラン)がいまだに提出されていないことに加え、辺野古「移設」が進展していないことで、否定的な見方がさらに強まっている状況です。
最近も、次期米国防副長官に指名されたカーター国防次官が13日の米上院軍事委員会で、米軍再編計画の見直しは「(検討の)テーブル上にある」と述べています。
このため、日本政府としては、2013会計年度予算の審議が行われる来年5月までに何としても普天間「移設」の「進展」を見せなければ、米政府のメンツもつぶしてしまいます。与党関係者からは、「この時点で進展が見られない場合、米軍再編計画自体が消滅してしまう」との危機感も伝わってきています。
説得材料なし
とはいえ、政府・与党に沖縄県を「説得」する材料は何もありません。野田首相の訪米を前に、仲井真弘多知事は19日にワシントンのジョージ・ワシントン大で講演し、普天間基地の「県外移設」を訴える意向です。
普天間基地の県内「移設」に反対する県民の意志に揺るぎはなく、「振興策」と引き換えに基地を受け入れるという「アメとムチ」政策はもはや、沖縄の経済界からも時代遅れのものと受け止められています。
米議会では、予算削減の観点から、沖縄の海兵隊を含む在外兵力の大幅削減も提案されています。日本政府はこのような動きにこそ、呼応すべきです。
普天間「移設」と海兵隊グアム移転 普天間基地を名護市辺野古に「移転」し、V字形滑走路の新基地の建設が「進展」することを条件に、在沖縄海兵隊8000人と家族9000人をグアムに移転するというもの。グアム移転経費は当初の見積もりで約103億ドル。日本側が約61億ドル、米側が残り約42億ドルを負担しますが、米側負担が90億ドル増えることが判明しています。
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