2011年9月20日(火)「しんぶん赤旗」
主張
情報収集衛星
「軍事偵察」のねらいは明白
政府は宇宙から他国の動向を監視する情報収集衛星「光学4号機」を近く打ち上げる予定です。4号機は設計寿命を過ぎている光学1号機の後継機です。
情報収集衛星の実体は他国の軍事施設や軍隊の動きを把握する軍事偵察衛星です。憲法にもとづく平和原則と宇宙の軍事利用を禁止した国会決議に違反しています。政府が「安全保障」に加えて「大規模災害等への対応」をもちだしたのは憲法違反との批判をかわすためです。しかし東日本大震災の対応でも情報収集衛星の情報はまったく役に立っておらず、「災害対応」のごまかしは明らかです。
両立しない使用目的
情報収集衛星は、昼間用の光学衛星と夜間用のレーダー衛星の2機を1組とする「2組4機」が本来の体制です。しかしレーダー衛星は機器の不具合で運用できず、現在は光学衛星3機が地球を周回し、他国の動きを監視しています。
政府は情報収集衛星で情報を得る目的を「外交・防衛等の安全保障及び大規模災害等への対応」と説明してきました。しかし「軍事偵察」と「災害対応」はそもそも両立するものではありません。
偵察衛星は、他国領土内の軍事施設や軍隊の動きを精密に把握するのが目的です。そのため特定の地点をピンポイントで撮影できる機能をもち、一定の時間ごとの変化をとらえます。東日本大震災のような広い地域の状況を撮影しようとすれば目標がぼけて偵察の任務が果たせません。
宇宙航空研究開発機構(JAXA)も偵察衛星は「広い地域をくまなく観測するような用途には不向き」と説明しています。災害対応に「不向き」なものをさも役立つかのようにいうのはまやかしです。「災害対応」のためというなら、広域の観測に的をしぼった地球観測衛星の整備に力をつくすべきです。
情報収集衛星の撮影画像はいっさい秘密扱いです。東日本大震災でも情報を必要とする被災地の自治体は画像情報をみることさえできませんでした。地震発生時から津波襲来時にかけて、情報収集衛星が被災地の上空を周回していたのかどうかさえ、政府は説明を拒否しています(日本共産党の吉井英勝衆院議員への政府答弁書)。情報収集衛星は「大規模災害等への対応」だという政府の説明は明白なごまかしです。情報収集衛星の保有はもうやめるべきです。
廃止して復興財源へ
情報収集衛星で他国領土内の軍事動向を監視するのは「日本防衛」のためではありません。イラク戦争支援などの自衛隊の「国際平和協力活動」を強化・拡大するための備えです。過去の侵略戦争を反省もしない日本が軍事衛星をもつのは、アジアの軍事的緊張を強めることにもなりかねません。
情報収集衛星の設計寿命は5年とされます。「2組4機」体制を維持し、5年ごとに後継機を打ち上げるためには巨額を要します。すでに使った経費は8000億円で、これからも毎年600億円以上もの予算が必要です。財界と軍需産業を肥え太らせるだけです。
東日本大震災の復旧・復興のために大きな予算が必要です。情報収集衛星の保有をやめれば巨額の予算を復旧・復興のために使うことができます。それこそ国民の願いに応える道です。
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