2011年9月17日(土)「しんぶん赤旗」

スパイ衛星の運用組織

防衛・警察が人事独占


 18日に光学4号機を打ち上げる予定の「情報収集衛星」の運用組織は、防衛省や警察庁などを中心とする他省庁からの出向・併任者が、幹部ポストのほとんどを独占し、全職員に対する割合は過半数を占めている―。内閣衛星情報センターの職員構成のこうした実態が16日までに、日本共産党の吉井英勝衆院議員の調査で分かりました。


災害対応は名ばかり

 情報収集衛星は「大規模災害などへの対応」と「安全保障」を名目に導入された、事実上の軍事偵察衛星(スパイ衛星)。同センターは、その開発・運用を担う組織として、内閣官房の内閣情報調査室に2001年に設置されました。

 組織規則によると、所長、次長の下に管理部や分析部などの内部組織があります。今回の調査で、警察庁や防衛省などからの出向・併任者計20人が、各内部組織の重要ポストの大半を占めていることが判明しました。(図)

 同センター幹部の構成をめぐっては、吉井議員が6月、歴代の所長と次長がほとんど防衛省と警察庁出身者である問題について質問主意書を提出。政府は「幹部職員の人事については、適材適所の観点から行っている」と回答しています。

 一方、幹部と内閣事務官の合計は、他省庁からの出向者73人、併任者111人の計184人(グラフ)で、全職員330人(定員219人と併任者111人)の過半数となっています。また、出向・併任者の3分の2以上を防衛省や警察庁、公安調査庁が占めており、軍事偵察衛星としての性格を改めて浮き彫りにしています。

 このほか、民間からの採用状況は明らかにしていません。

 情報収集衛星にはこれまで8000億円以上がつぎこまれています。

軍事偏重の異常な人事

 吉井英勝議員の話 3月11日の地震・津波の被害や福島第1原発事故の状況について、情報収集衛星の画像を公開するように何度も要求してきたが、政府は拒否し続けている。今月の台風12号の被害についても、土砂ダム決壊や深層崩壊の危険性について重要な情報が得られるはずなのに、これも画像を表に出さない。

 大規模災害への対応を導入目的に掲げながら、実際に活用しない背景には、軍事に偏重した異常な人事がある。徹底的に追及したい。


 情報収集衛星 昼間の晴れたときに地上の物体を監視する光学衛星と、夜や曇りでも使えるレーダー衛星の2種類あります。撮影データを防衛省や公安調査庁などが利用しています。分解能は、光学衛星が数十センチメートル〜1メートル、レーダー衛星が1〜3メートルとみられますが、性能や運用実態、撮影画像は非公開。光学・レーダー衛星は、それぞれ2機あれば地球上のどの地点も1日1回撮影できます。

 2003年からこれまでに8機(実証衛星1機を含む)を打ち上げました。打ち上げ失敗や故障で、現在は光学1〜3号機のみを運用中。政府は早期に各2機の態勢の確立をめざすとしており、17年度までに新たに9機を打ち上げる計画です。

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