2011年9月15日(木)「しんぶん赤旗」
主張
普天間基地「移設」
「固定化」で脅すとは何事か
野田佳彦首相が所信表明演説で、沖縄の米軍普天間基地の名護市辺野古(へのこ)への「移設」について、「日米合意を踏まえつつ」「全力で取り組」むと表明しました。
普天間基地の閉鎖・撤去と辺野古への「移設」反対が県民の揺るがない総意です。沖縄県民の総意をふみにじるのは断じて許されることではありません。しかも野田首相はわざわざ「普天間飛行場の固定化を回避し」と「固定化」を口にしました。「移設」に反対なら「固定化」させるというあからさまで許されない脅しです。
基地の重圧を押し付け
政治の基本方針を示す首相の所信表明演説や施政方針演説で普天間基地の「固定化」をもちだして沖縄県民を恫喝(どうかつ)したのは野田首相以外にいません。県民が反発しているのは当然です。
野田首相は「普天間飛行場の固定化を回避し沖縄の負担軽減を図る」とのべました。県民に基地の重圧を押し付けておきながら縮小・撤去の願いに耳を傾けず、「移設」と「固定化」の二者択一を迫ることほど、ひどい仕打ちはありません。「移設」も「固定化」も基地の重圧を押し付け続けることに変わりはありません。「負担軽減」というなら野田首相は「固定化」発言を撤回すべきです。
首相だけでなく、野田政権の誕生いらい、玄葉光一郎外相が「辺野古移設」を「踏まれても蹴られても誠心誠意でやる」とのべたことも県民の怒りを買っています。沖縄の地元紙が「日米両政府こそ県民を踏みつけにしてきた張本人ではないか」と批判しているのは当たり前です。
政府・防衛省が「移設」を前に進めるために、欠陥が指摘され中断していた環境影響評価(環境アセス)の作業を再開しようとしていることも見過ごせません。辺野古につくる新基地で、米軍機がどういう経路を飛ぶのかも示さず、垂直離着陸も可能な最新鋭輸送機オスプレイの影響評価もしない欠陥アセスで、「移設」作業を加速するのは許されません。
野田政権が沖縄県民の願いに背を向け、「移設」強行の姿勢を示しているのは、アメリカの要求を最優先にしているからです。野田氏が首相に指名された直後、1日の電話会談でオバマ米大統領は、普天間基地の「移設を完遂してほしい」と野田首相に要求しました。野田首相の日米軍事同盟絶対の姿勢をみすかしての圧力です。
野田首相の「固定化」発言など一連の動きは、この要求に応えたものであるのは明白です。オバマ大統領の要求に応えることでアメリカの歓心を買い、政権の立場を強めようという党略的な思惑さえ透けてみえます。
日米合意の白紙撤回を
こうした「アメリカ直結」の外交では、県民・国民の反発を買うだけで、野田政権がいっそう追い詰められるのは明らかです。人口が密集した宜野湾市のど真ん中にある普天間基地は米国防長官でさえ「世界一危険」といわざるをえない基地です。夜間・未明の爆音被害だけでも深刻です。こうした異常を放置し新基地を押し付ける政府の責任は重大です。
事態を変えるには、普天間基地の閉鎖・撤去しか道はありません。「移設」の実行を迫る「日米合意」は、白紙撤回に追い込むことが重要です。
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