2011年9月13日(火)「しんぶん赤旗」
きょうの潮流
次元が低すぎて批判するのもイヤになりますが、触れないわけにもいきません。就任からわずか9日で経産相を辞任した鉢呂吉雄氏のことです▼視察した福島第1原発周辺の自治体を「人っ子一人いない。まさに死の町」だと言い、帰京後の一部記者との懇談で、一部記者に防災服を近づけて“放射能をつけてやる”…。鉢呂氏は後者について記憶は定かでないとしつつ、そのような動作をしたことは認めています▼「人っ子一人いない」のは当たり前です。政府が周辺地域を警戒区域に設定して立ち入りを禁止しているからです。そもそも、原発事故を収束させて、「生きた町」に戻す立場でこの発言は、あまりにも傍観者的です▼また、視察中は防護服で身を守り、除染も受けていたはず。体に放射性物質が付着していないはずなのに“つけてやる”とは…。放射能で汚染された怖い場所を“冒険”して帰り、高揚した気分をそのまま他人に伝えるという、実に稚拙な感覚です。こんな人物が、原子力災害対策を主導する経産相に就いていたのだから、野田首相の任命責任も免れません▼鉢呂氏の在任期間は歴代大臣で4番目の短さです。これに並ぶのが、被災地を視察した際、“上から目線”発言で辞任した松本龍前防災担当相。どちらも震災がらみで短命に終わったのは、決して偶然ではありません▼「国民の生活が第一」といって政権に就きながら、国民の痛みや苦しみへの感度が驚くほど鈍い、この政権の地金のあらわれです。