2011年9月11日(日)「しんぶん赤旗」
首相 東アジア共同体「いらない」
「いま、この時期に東アジア共同体などといった大ビジョンを打ち出す必要はない」
野田佳彦首相が、10日発売の月刊誌『Voice』(ボイス)に寄稿した論文で、こう主張しています。
「(外交の)『軸』は、間違いなく日米関係」と強調し、“東アジア共同体はいらない”とする主張は、新政権の基本的な外交方針を内外に鮮明に示すものとなりました。
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実はこの野田首相の主張、いまに始まったことではありません。
「日米同盟試練の時」。2008年11月に松下政経塾・政経研究所の「日米次世代会議プロジェクト」が発行した同報告書は、前原誠司氏(現民主党政調会長)らがまとめ、野田氏が賛同者となったもので、両氏とも同塾の出身者です。
報告書は、「日米が同盟の目的を再確認し、同盟を進化させるために努力し続けなければ、日米の戦略的一体性は失われてしまう」と表明。その上で、「米国側には、『東アジア共同体』は、自らを排除する意図をもった動きとして受け止める向きが強く、中国がそうした長期的展望を持っている可能性も高い」と米国の立場を代弁し、「日本にとって、確実性の高い日米共同体を不確実な東アジア共同体で代替することは、あまりにリスクの高い選択である」と結論づけていました。
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しかし、前原氏や野田氏の見解はどうであれ、民主党は少なくとも09年の「政権交代」時には違った方針を掲げていました。当時の鳩山由紀夫首相は、「東アジア共同体」構想と“対等な日米同盟”を看板に、自民党との違いを国民にアピールしていました。野田氏の今回の主張は、いまや民主党政権は政権交代時の理念を葬り去り、「日米同盟絶対」という古い自民党政治に完全に回帰したことを意味しています。 (泉)
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