2011年9月11日(日)「しんぶん赤旗」

主張

同時多発テロ10年

「対テロ戦争」の罪は重い


 2001年の米「同時多発テロ」から10年。この間にブッシュ政権が強行した「テロとの戦争」は、世界規模でテロを拡大し多大な犠牲をもたらすなかで破綻しました。唯一超大国としての軍事・経済力をもって、この戦争を世界に押しつけた米国の覇権主義を拒否する国際社会の審判も明白です。

 しかし、野蛮なテロを根絶するのに不可欠な、平和の国際秩序の建設はまだ不十分です。10年の節目を迎えて、国連憲章に基づく国際秩序に向けて、国際的な協力を強めることが必要です。

戦争では解決しない

 米国は5月、同時テロの容疑者ウサマ・ビンラディンをパキスタン国内で殺害しました。報復優先の米国の姿勢は、テロには「法にもとづく裁き」を、という国際社会で確立されたルールに反し、テロ根絶に向けた国際協力にさらに困難を持ち込むものです。

 8月、アフガニスタンでの米軍の犠牲者は67人を数え、月間で侵攻以来の最悪を記録しました。アフガンで米国が陥っている泥沼は、軍事力でテロを抑えようとする立場の誤りを象徴しています。外国軍がわがもの顔に行動し、アフガン国民を傷つけていることが、治安の悪化を招いています。

 米国はこの10年、アフガンで報復戦争を、イラクで国連憲章違反の侵略戦争を続けてきました。米国での研究によれば、これら戦争での死者は控えめに見積もっても兵士と民間人合わせて22万5千人、国内外に逃れた難民は780万人にのぼります。戦費は4兆ドル(約310兆円)もの巨額で、米経済に重くのしかかっています。

 これほどの代償と内外の批判を前にしても、米政府はこれらの戦争を誤りとは認めていません。イラクには、開戦の口実とされた大量破壊兵器もテロとの結びつきもありませんでした。しかし、オバマ大統領は、イラクから米軍を撤退させながらも、「独裁者を排除し、イラク人に将来を築くチャンスを与えた」と、この戦争を正当化しています。

 「(テロは)犯罪であって、戦争行為ではない。民衆の間に恐怖を作り出して政府に圧力を加える政治的動機による暴力的道具だ」と、同時テロ当時に英情報機関MI5の長官を務めたエリザ・マニンガムブラ氏はいいます。国連をはじめ国際政治の舞台でテロ克服の道筋が議論され、戦争はテロを解決できず、逆にテロを促進するとの見方が強まっています。

 戦争の誤りはそれにとどまりません。テロは貧困や地域紛争などの不正義を土壌とし、これらの問題の解決に取り組むことがテロ克服の展望を開きます。これら政治課題の解決には、国際協力が重要です。それには平和が不可欠の条件です。10年前、同時テロに際して生まれた世界的な連帯は、その可能性を示すものでした。

日本にも見直す責任

 日本は自民党政権時代に米国の尻馬に乗り、憲法に反してイラクやインド洋に自衛隊を派兵して「対テロ戦争」に加担しました。その誤りを見直す責任があります。

 民主党政調会長の前原誠司氏は訪米中、外国軍を守るための自衛隊の武器使用基準の緩和などを約束しました。軍事一辺倒で違憲の海外派兵を拡大するこうした考え方こそ世界を危険に追いやることを、この10年は示しています。





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