2011年9月10日(土)「しんぶん赤旗」
主張
東日本大震災半年
政府の責任で復興遅らせるな
マグニチュード9・0の大地震と巨大な津波、それにともなう史上最悪の原発事故の発生から、11日で6カ月になります。
亡くなった方と行方不明者は2万人、いまも多くの人が不自由な避難所や仮設住宅で暮らします。東京電力福島第1原発の事故で避難させられた人たちは住み慣れた地に戻れるめどさえ立ちません。被災者を支援し復旧と復興をすすめる政府の責任は重大です。
再建の槌音は程遠く
震災当時の、雪が舞い厳しい寒さが肌を刺す季節から、春から夏、そして秋口へと移りました。被災地では商店や工場が再開し、港ではサンマなどの水揚げが始まったところもありますが、本格的な復興の槌音(つちおと)には程遠い状態です。
地震と津波で被災地をうめつくしたガレキの処理は進んだように見えます。しかし、町中から運ばれたガレキは仮置き場にうずたかく積まれ、分別し最終処分するめどはまだ立ちません。道路などの片付けはすんでも、夏草に覆われた住宅地には壊れた建物が残ります。ガレキの処理を自治体任せにせず、国が責任をもって進めることは復興の第一歩です。処理費用を国が負担し、代行できる法律がようやく成立しましたが、その実行が求められます。
仮設住宅の建設も県や自治体任せにしたため、旧盆までには入居を終えるという政府の約束は実現しませんでした。数は足りても被災地から遠く、食事などの提供もなくなるなど、入居辞退が相次ぐありさまです。公営住宅や民間の賃貸住宅のあっせんを広げるなど、政府が責任をもった、血の通った対策が不可欠です。
住宅だけでなく港や工場を再建して住民の生活と生業(なりわい)が立て直せるよう支援すること、再建に不可欠な「二重ローン」の対策もすみやかに実行すること、学校や病院など公共施設を整備すること、道路や鉄道を復旧させることなど、復旧・復興のために政府がやるべきことはたくさんあります。政府自身がやるべきことをやらず、復旧を遅らせているとの批判があとを絶ちません。菅直人政権で新設された松本龍復興担当相が「知恵を出したところは助けるが、知恵を出さないやつは助けない」と発言して、わずか数日で辞任させられたのはその最たるものです。
災害で被災した住民に政府が救援の手を差し伸べ、復旧や復興を手助けするのは、憲法25条が定める国民の「健康で文化的な最低限度の生活」を保障する国の責任です。憲法13条は「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利」について「最大の尊重」を求めています。住民や自治体任せにせず、国がその責任を果たしきるかどうかがいよいよ問われています。
すべての被災者に安心を
「国策」として推進した原発の事故で被災した住民に、避難先を確保し、東電に全面賠償させ、住民が安定した生活を取り戻せるよう支援することは文句なしに国の責任です。事故から半年たつのに、汚染された地域の放射性物質を取り除く対策が進んでいないのは大問題です。
重要なのは、地震や津波の被災者も原発事故の被災者も、ひとり残らず安心して生活できるようにすることです。農漁業の再建や悪化する雇用の確保など、政府は責任を果たしつくすべきです。