2011年9月9日(金)「しんぶん赤旗」
野田政権が狙う「国家戦略会議」
財界主導型へ回帰
民主党の野田佳彦新政権で、自民・公明政権時代に“財界直結”の政策決定のけん引役となった“司令塔”の復活を模索する動きが活発化しています。
財界への約束実行
野田首相は組閣前の1日、日本経団連、経済同友会、日本商工会議所の財界3団体を訪問する異例の行動を行い、米倉弘昌経団連会長に「(政府内の)いろいろな会議をつくり直す。経済界、経団連にぜひとも協力していただきたい」と、財界代表が参加する新たな会議を創設する姿勢を示しました。
その具体化が、経済財政など政権の基本政策について議論するために首相直属の「国家戦略会議(仮称)」を設置することです。
野田首相は6日、古川元久国家戦略担当相に「(政府で設置している)既存のさまざまな会議をどう整理するか。そこから考えてほしい」と指示。野田首相をトップとして、関係閣僚と日銀や経済界首脳らが参加する「国家戦略会議」に、政策決定の機能を“集約”し、強力にすすめる姿勢を示しました。
これまでの民主党政権には、エネルギー政策や環太平洋連携協定(TPP)、税と社会保障、経済成長戦略など、テーマごとに多数の会議が存在していました。それを“集約”する「国家戦略会議」のモデルが「自民、公明両党の連立政権だった小泉内閣で政策決定の舞台となった経済財政諮問会議」(日本経済新聞4日付)です。
直結の政策づくり
同会議は小泉政権時代、奥田碩(ひろし)トヨタ自動車会長(元日本経団連会長)、牛尾治朗ウシオ電機会長(元経済同友会代表幹事)らが参加し、政権の重要政策づくりに財界・大企業のトップが直接関与する仕組みとして機能しました。
同会議が「構造改革」を“表看板”に行ったのは、不良債権の強引な早期最終処理、労働法制の規制緩和、社会保障の抑制、郵政民営化など多くの分野に及びます。
バブルに踊った金融機関の救済のために公的資金を注入する一方で、中小企業の倒産と失業は拡大。労働法制の規制緩和で非正規労働を拡大しながら、大企業は巨額の内部留保をため込みました。さらに毎年2200億円の社会保障費の削減は「医療崩壊」「介護難民」を生み出しています。
あまりの国民いじめに、自民党の中からさえ「もはや乾いたタオルを絞っても水は出ない」「新自由主義、市場原理主義を唱えた間違いは、世界の不況が証明した」(尾辻秀久議員、2009年1月30日の参院本会議)と廃止を求める声が出たほどです。
民主党も野党時代には「経済財政諮問会議は結局、第二の主計局」(菅直人前首相、03年1月23日の衆院予算委員会)と批判。「政権交代」後には、「廃止」せざるをえなくなっていたのです。
それが今、復活する意味は何か。そこには、国民の反発が強い、消費税増税や社会保障の切り捨て、TPPの推進、原発の維持・推進など、財界の要望を政策に反映させる布陣固めの意図が透けて見えます。