2011年9月9日(金)「しんぶん赤旗」

主張

政府税調始動

庶民増税一辺倒に道理はない


 野田佳彦内閣の発足後初めての政府税制調査会(会長・安住淳財務相)が7日に開かれました。

 出席した野田首相は冒頭、「復興増税」の具体化の検討を指示しました。さらに、社会保障と税の「一体改革」にもとづく消費税増税について、今年度中に増税法案を提出する内閣の方針に沿った対応を求めました。

とことん大企業中心

 「将来世代に負担を先送りするのではなく今を生きる私たちの世代がいかに連帯して負担を分かち合うかということ」。野田首相は「復興増税」を進める理由について、このように説明しています。

 東日本大震災の復興事業が今の世代だけのためであるかのような主張はあまりに貧しい発想です。

 被災地の復興は被災地のみならず日本全国の暮らしと経済にとっても極めて大切な事業です。日本の食卓を支えてきた漁業、農業、先端技術を支えてきた中小企業などの産業を再生することは、現在だけでなく先々の日本経済の安定的な発展にも不可欠です。

 被災地の産業基盤の再生も、それを担う被災者の生活再建と一体で取り組まれてこそ、生き生きとした真の再生を実現できます。被災地と被災者を主役にした復興の事業は日本の将来にとってもかけがえのない財産となります。その負担を、被害を受けた世代のみに負わせようという議論に道理はありません。

 政府税調は「復興増税」で、所得税と法人税の定率増税や消費税など基幹税を中心に組み合わせた複数の選択肢を示す予定です。その中に法人税を含めることで大企業も負担し、国民と「連帯」しているかのように描き出そうとしています。しかし、ここには大きなごまかしがあります。

 民主党政権は財界の要求に従って5%の法人税減税を実行する方針でしたが震災後に凍結されています。検討されているのは5%減税を実施することにした上で、その減税の範囲内で“増税”し、大企業も「復興増税」を負担した形にするというものです。

 これでは単なる負担のアリバイ作りです。“増税”は数年で打ち止め、あとは5%の減税だけを残します。「復興増税」の選択肢として所得税と法人税が有力だと伝えられていますが、実際は大企業に新たな負担はありません。負担を求められるのは国民だけで、大企業には数年後の減税が約束されています。

 「一体改革」で10%に増税しようとしている消費税は「復興増税」の選択肢にも含まれています。消費税増税は、とりわけ被災者に過酷な負担です。所得が減り貧困が広がって消費低迷が構造的な問題となっている日本経済に決定的な打撃となることも明らかです。しかも、大企業は価格にすべて転嫁することで1円も負担しなくて済む税金です。野田内閣の税制の議論は大企業優先、大企業中心主義で凝り固まっています。

巨額の内部留保を活用

 復興を妨げ、大企業を聖域にした増税には反対です。

 復興の財源は大企業・大資産家への行き過ぎた減税を是正し、軍事費を削り、政党助成金を廃止するなど予算を抜本的に見直すこと、復興のために発行する国債は大企業に引き受けを要請して、大企業の巨額の内部留保を活用することで捻出するよう求めます。





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