2011年9月7日(水)「しんぶん赤旗」
きょうの潮流
和歌山の田辺市に住む友人と、まだ連絡がとれません。6日付本紙の記事で、電話の通じない事情が分かりました▼友人は、中里介山の小説『大菩薩峠』の一舞台でもあった旧龍神村にいます。本紙が報じています。「道路が寸断、電気、固定・携帯電話も不通で半孤立状態の田辺市龍神村。3棟が流されましたが、住民の無事は確認されています」▼本当に無事でありますように。田辺は熊野古道の町です。龍神の下流、海辺から本宮大社へ歩く中辺路(なかへち)の滝尻のようすも伝えられていました。孤立。「山が崩れ川をふさぎ天然のダム湖ができて…」(川崎五一市議=5日付本紙B版)▼北の二つの高気圧にはばまれ、いつもより北に寄る偏西風に押されず、自転車なみの速さで西日本を縦断した台風12号。100人超の死者・不明者をだし、集中豪雨がとりわけ紀伊半島を傷めつけました。自然の偶然が重なったとはいえ、列島の東から北海道を襲う珍しい進路の13号といい、やはり異常にみえます▼突然ゆれる地震と違い、台風の進路や速度はだいたい察しがつきます。しかし、どこで・どう暴れるか予想できないうちに不意打ちをうける場合が、ふえていないか。気象の異変に、山林の水をたもつ力の衰えなどがあいまって▼いつ、なにが起こるか分からないのに、土砂災害の危険のある所は全国に52万以上といいます。和歌山県だけで1万8千カ所を超えます。危ないと承知の上で十分に手を施していないなら、住民を見殺しにするに等しい。