2011年9月6日(火)「しんぶん赤旗」
主張
台風12号豪雨被害
自然災害だからとすまさずに
四国沖の太平洋から日本海側へと日本列島を通り抜けた台風12号にともなう記録的な豪雨は、各地に河川の氾濫や土砂崩れをもたらし、和歌山、奈良、三重の3県を中心に亡くなった人や行方不明者が90人にのぼるという、大きな被害をもたらしました。亡くなった方とそのご家族、被害を受けた方々に、心からお悔やみとお見舞いを申し上げます。
記録的な豪雨にも備えて
大型で動きが遅かった台風12号による記録的な大雨は、通過した四国や中国地方だけでなく、進路の東側にあたった関東や東海、北陸、関西をはじめ、遠く北海道まで、日本列島の広い範囲で大きな被害を及ぼしたのが特徴です。とくに太平洋から雨雲が次々と押し寄せた紀伊半島の和歌山、奈良、三重の3県では、年間の雨量の3分の2近くが数日間で降ったといわれるほど、記録的な豪雨に見舞われました。各地で河川が氾濫して、あふれた水が民家を襲い、広い範囲で地域が孤立、土砂崩れが土石流や鉄砲水をもたらして被害を大きくしました。
もともと山地が多く、毎年台風が上陸する日本列島は風水害などへの備えが欠かせません。とりわけ紀伊半島は国内でも最も雨が多く、台風も多い地域です。加えて近年、「異常気象」といわれるほど、各地で記録的な豪雨による洪水や土砂崩れの被害が相次いでいます。大きな被害を出した原因を、自然災害だから避けられなかったとすますことはできません。
記録的な豪雨などで中小河川の堤防破壊や都市での水害が相次ぐようになったため、政府は数年前から豪雨対策の強化を打ち出し、連続的な堤防を築くことだけに偏った治水対策の見直しや、防災施設の能力を超えた災害にも対応できるような住民の避難などの体制の強化、森林の保水力を強化するなど地域の防災力を強化することなどを提案してきました。
今回の豪雨災害でも10メートル近い堤防が破壊し、土砂崩れが川をせき止め一気に大量の水が押し寄せたところがあります。一部では住民にあらかじめ危険を知らせる対策や、避難勧告・指示の遅れも指摘されています。通常の予想を超えた豪雨などが発生することも想定して防災対策の見直しや避難体制の準備が尽くされていたのか、改めて点検が不可欠です。
被害が大きかった紀伊半島は国内有数の木材産地でもあります。近年林業の衰退で山林が荒廃し、森林が水を蓄える力を後退させ、大雨や集中豪雨に弱い原因の一つとなっているとの指摘もあります。高齢化や山林の荒廃がすすむ中で地域の防災力についてもどのような対策が講じられていたのか、目を向ける必要があります。
国民の生活と安全を守る
自然災害がいつも予想した規模に収まる保証はありません。それを「異常」とすまさず、災害による被害を少しでも減らすよう対策を尽くすのは、国民の暮らしと安全を守る政府の責任です。「行政改革」や「事業仕分け」の掛け声で、「災害予防」や「国土保全」など防災関連の予算が大幅に減り続けているのは大きな問題です。
東京や大阪などの大都市での大規模水害への備えも重要です。地下鉄や地下街が水没して大きな被害を出すなどの事態に備え、豪雨対策を強める必要があります。