2011年9月5日(月)「しんぶん赤旗」
主張
大阪維新の会条例案
教育破壊・首切り勝手の無法
大阪府の橋下徹知事が率いる「大阪維新の会」が、9月府議会に「教育基本条例案」と「職員基本条例案」を提出しようとしています。大阪市議会、堺市議会にも同様の条例を出し、ダブル選をもくろむ今秋の府知事選・大阪市長選の争点にするといいます。
橋下知事は知事与党の「大阪維新の会」を組織し、春の府議選で議会の過半数を制すると全国でも例のない「君が代」強制条例を強行しました。今回の条例案は、「政治には独裁が必要」といってはばからない橋下知事の、権力的な野望をむきだしにしたものです。
不当な介入を正当化
「君が代」強制条例は公立学校の入学式や卒業式の「国歌斉唱」のさい教職員に「起立」を義務付けたもので、国が定めた「国旗・国歌法」さえ認めなかった異常な強制です。教職員の思想・信条の自由を奪い教育現場に重大な障害を持ち込んで教育そのものを破壊するものです。廃止を求める幅広いたたかいが広がっています。
今回持ち出してきた「教育基本条例案」はそれを徹底するとともに、知事の教育への不当な介入を正当化するものです。条文には、「知事が教育目標を制定」し、府教育委員会はその「目標を実現するため、具体的な教育内容を盛り込んだ指針を作成し、校長に提示する」とあります。「基本理念」には、「自己責任の自覚」「愛国心にあふれる」「世界標準で競争力の高い」などの言葉が並びます。
知事の介入を徹底するため、「校長、副校長を公募し、教員は校長のマネジメントに服す」。校長は5段階の「人事評価」をおこない、必ず5%は最低の「Dランク」にする。連続最低ランクの教員は免職へ追い込む―など、ことこまかに規定しています。保護者にも「不当な態様で要求等をしてはならない」と明記するありさまです。
教育は「国民の教育権」にもとづく、教職員と子どもたちの人間的なふれあいを通じた営みです。人間的な主体性が不可欠で、条例や命令でがんじがらめにしてはならない仕事です。最高裁判決(1976年)も「国家権力による教育内容への介入はできるだけ抑制的でなければならない」としています。「教育基本条例」はそれを根本から否定し、公教育を根こそぎ破壊しようとするものです。
「教育基本条例」と一体の「職員基本条例」も、「公務員組織をふつうの組織」にするとしてまず府庁幹部をすべて任期付き職員とし、公募するとうたいます。その狙いについて「維新の会」は「首長の政策に賛同する有能な人材からなる、大阪内閣を実現」と語ります。
府の職員を憲法にもとづく「全体の奉仕者」から、「知事と維新の会の奉仕者」へと変えようとするものであり、公務員の政治的中立性や行政の安定性を保障する身分保障もとりはらい、ものいわぬ職員集団に変えてしまうものです。
批判の広がり、急速に
条例案については大阪府の教育長が、「実行されれば大混乱になる」と声をあげるなど、教育関係者、法曹界などから批判が広がっています。
ことは憲法理念と子どもたちの未来、府民の暮らしにかかわる大問題です。条例案の議会への提出も成立も許さず、大阪の教育と自治体らしい府庁組織を守るために、力を合わせることが急務です。