2011年9月5日(月)「しんぶん赤旗」
きょうの潮流
より速く、より高く、より強く―人類の可能性を切り開く超人たちの祭典が幕を閉じました。200をこえる国と地域の選手が韓国・大邱(テグ)に集った世界陸上。さまざまな人種がとけあう熱戦に連日ひき込まれました▼最終日の男子マラソン。やはりアフリカ勢の走力は抜群でしたが、日本勢も奮闘しました。堀端選手が7位入賞、中本選手が10位、市民ランナーの星・川内選手は最後ねばって18位。上位3選手の合計タイムで競う団体で、日本は銀メダルをとりました▼それにしても、長距離でのケニア勢の強さは今回も圧倒的でした。幼少から起伏のはげしい高原を駆け回り、染み込ませた走る力を競技用に洗練させる。それが、持久力だけでなく、無駄なく効率的なハイスピードの走りを生み出しているのでしょう▼追いつけない理由に、環境や生活のちがいをあげたら進歩はのぞめませんが、日本の子どもたちの体力・運動能力が全体的に低下していることはたしかです。背景には、発達段階で必要な動きを習得できていない「動きの貧弱さ」があるといいます▼発育発達学を専門とする山梨大の中村和彦教授によると、いま日本の小学生は世界で一番運動していないそうです。その現状から、人間の基本的な動きの大切さを説いています▼以前なら、ほとんどは遊びのなかで身についた動きでした。しかし、いまは外遊びよりも携帯ゲームが主役です。鍛え上げられた体の美しさに感嘆しながら、便利さの一方で失ったものの大きさを痛感します。