2011年9月4日(日)「しんぶん赤旗」

いまメディアで

新政権に「翼賛」のススメ


 民主党の野田新政権のスタートにあたり、大手全国紙はいっせいに社説を掲げました。消費税増税など財界が熱望する悪政の実行を迫る論調が目立ちます。そのために、自民、公明両党との「大連立」など「翼賛体制」の確立を勧めています。 (渡辺健)


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(写真)民主党の野田新代表(新首相)に注文をつけた全国紙の各社説

消費増税“先送りするな”

 各紙が着目したのは、復興増税の必要性を訴え、消費税率の10%への引き上げ方針の具体化を唱えた野田氏を民主党が代表に選んだことです。「朝日」は「政治家は国民に厳しい現実を説いて負担を求めることを厭(いと)い、必要な決定を先送りしてきた」と批判。野田氏選出を「『先送りの政治』からの脱却する機会にしなければならない」と主張しています。

 「『もう後はない』覚悟を」との社説を掲げた「毎日」。「復興増税だけではない。消費税率引き上げを含む税と社会保障の一体改革についても、依然、党内の抵抗は大きい」と嘆き、「負担を先送りしない」と語った野田氏に「強い意志」を求めています。「日経」も野田氏に、自らの増税方針に沿った「強い指導力を発揮してもらいたい」とし、「読売」は震災復興の財源について、「消費税の税率引き上げも検討すべきである」と迫っています。

大連立を主張

 もうひとつの特徴は、民主党と自民、公明両党との連立・連携を求めていることです。

 「読売」は、自民、公明両党との「大連立の実現を」と主張。その課題として、消費税増税のほか、環太平洋連携協定(TPP)参加、選挙制度の「改革」、エネルギー政策、米軍普天間基地移設や原発輸出まであげています。

 「朝日」は「『合意の政治』への進化を」と主張。「民主、自民両党の立ち位置に抜きがたい違いがあるようには見えない」と指摘し、野田首相が税制「改正」など三つのテーマで民自公3党の協議機関設置する提案を「自民党は応ずるべきだ」としています。「日経」は、民主党執行部に対し、「与野党協議の環境づくりを急ぐべきだ」と求めています。

 “民主、自民に違いはないのだから、いっしょにやれ”というのは、「二大政党」づくりをあおり、自民、民主の競い合いを演出してきた大手メディアの論調の破綻です。

切望する財界

 消費税増税をはじめ、「大連立」の課題はいずれも財界が切望しているものばかりです。自民、公明両党に「101回でもプロポーズ」するという野田氏に、日本経団連の米倉弘昌会長が「最大限の協力を申し上げたい」とエールを送ったのもうなずけます。

 財界にとって消費税増税は、大企業の税と社会保障の負担を軽くする財源づくりです。一方、庶民にとって低所得者ほど負担が重い消費税の増税は、福祉、家計、営業を破壊する悪税です。大震災の復旧・復興にも大きな障害となります。原則関税ゼロのTPPへの参加は、震災で大打撃を受けた東北をはじめ日本の農業や水産業にいっそうの壊滅的な打撃を与えるものです。喜ぶのは、一部の輸出大企業だけです。

 「本気ならば応援しよう」(「朝日」)「指導力を発揮して有言実行を」(「読売」)「首相は今度こそ『有言実行』の約束果たせ」(「日経」)「有言実行しか道はない」(「毎日」)。今年の1月はじめ、菅直人首相(当時)が年頭会見で表明した消費税増税とTPPへの参加の実行を迫った各紙。まるで悪政推進の「共同社説」を掲げ、権力監視のメディアの役割はどこへいったのかと批判されました。首相はかわっても、同じことを繰り返そうというのでしょうか。





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