2011年9月4日(日)「しんぶん赤旗」

きょうの潮流


 列島のあちこちを水浸しにし、非情にも人を水にさらい、台風12号が北へ進みました。四国・中国や近畿・東海をなめるように。地震に台風。またもや、災害列島日本の現実をみせつけられました▼1日付本欄で紹介した「竹久夢二 震災スケッチ展」が開かれている東京・復興記念館。訪れたついでに、関東大震災についての古い資料の展示もみました。関東の各地で地面がどれほど盛り上がったか、昔の地震と比べた図があります▼1923年の関東大震災は、最高の地点で2メートルほど。しかし、818年と1703年の地震は、最高6メートル前後に達していたようです。図が、無言で警告を発していました。やがて88年前より強い地震が関東を襲ってもおかしくはない、と▼1703年の地震は、元禄地震とよばれます。「東海道は川崎から小田原までほとんど全滅し、江戸・鎌倉などでも被害が大きかった」(『理科年表』)。津波でも知られる地震です。「犬吠崎から下田の沿岸を襲い、死(者)数千」(同)▼今よりずっと人の少ない時代の数千人です。1923年関東大震災でも、鎌倉や伊豆に津波がきました。熱海におしよせた波は、高さ12メートル。「一瞬にして親を失い、妻に別れ、家財を失えるもの幾何(いくばく)なるやを知らず」(静岡県の記録から)▼88年前の津波は、あまり知られてきませんでした。津波研究者の山下文男さんは、被災地が観光地なので「津波」を語りにくい事情もあったのでは、と考えます。災害列島の歴史は、多くを教えます。





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