2011年8月31日(水)「しんぶん赤旗」
主張
野田首相指名
国民の批判に応える姿勢ない
ちょうど2年前の総選挙で政権交代が決まった日(8月30日)でした。前日の民主党代表選の決選投票の結果、逆転で新代表に選ばれた野田佳彦氏が、民主党政権で3人目の首相に指名されました。
国民は「自民党の政治を変えてほしい」との願いを裏切った民主党政権に失望し、怒りを強めています。野田氏には民主党の「挙党」態勢や民主党に「マニフェスト(政権公約)」の見直しを迫る自民・公明両党への配慮はあっても、国民の批判に応える姿勢はありません。これまでの民主党政権同様、早晩行き詰まり、破綻するのは目に見えています。
政権交代から2年で
自民党政権から交代してわずか2年で鳩山由紀夫、菅直人両氏の内閣が次々破綻し、3人目の首相が誕生することになったのは、民主党政権になっても自民党以来の「アメリカべったり」「財界本位」のゆがみを正さないかぎり、政治の行き詰まりが打開できないことを示しています。自民党政権の末期から数えて5年間で6人目の首相です。「二大政党」の破綻と行き詰まりは明らかです。
鳩山内閣は選挙中の公約を裏切って自民党政権の方針通り沖縄の米軍普天間基地の「県内移設」を決め、菅内閣は自民党とともに消費税の10%への増税を強行しようとして、いずれも国民の批判をあびました。野田氏にもそうした異常を正す姿勢はありません。
民主党代表選の中で野田氏は、「日米同盟が基軸」だとし、名護市辺野古に米軍の新基地を建設する「日米合意」は「継承していきたい」と明言しました。「県内移設」に反対する沖縄県民の批判に耳を傾けようとはしていません。
野田氏は菅内閣の財務相として、「社会保障と税の一体改革」の名で増税路線を推進してきました。代表選のなかでも消費税10%への「環境整備を実現する」とのべ、大企業の法人税を減税する法案についても「早期成立をめざす」としています。総選挙のさいの「4年間は消費税を増税しない」との公約を踏みにじり、野田首相の下で消費税増税が持ち出される危険がますます強くなっています。
見過ごせないのは、東日本大震災への復興と東京電力福島第1原発事故への態度です。菅内閣は「復興」と称して農業や水産業に大企業を参入させる「特区」構想や、被災者にまで増税を押し付ける「復興増税」を持ち出しました。野田氏はその方向を、そのまま強行しようとしています。そればかりか福島原発事故を機に撤退が求められている原発についても事故の「収束」や「除染」はいうものの「安全性を確認した原発の活用」で電力を確保すると、原発依存を続ける立場です。国民の不安に応える姿勢は全くありません。
「大連立」の危険と対決
かつて「A級戦犯は戦争犯罪人ではない」と発言した野田氏に対しては、韓国などからも懸念の声が上がっています。こうした態度を取り続けるなら、外交面でも行き詰まるのは目に見えています。
野田氏は、「マニフェスト」見直しを盛り込んだ自民・公明との「3党合意」は堅持するとしています。「大連立」は政権交代を願った国民を根本から裏切るものです。野田政権と正面から対決し、新しい政治を切り開く国民のたたかいが、いよいよ求められる情勢です。