2011年8月30日(火)「しんぶん赤旗」

きょうの潮流


 いま上映中のアニメ「コクリコ坂から」は、高度経済成長渦中の時代のにおいに満ち満ちています。東京オリンピックを翌年にひかえた時代設定がそうさせたのでしょう▼古い木造の建物、坂本九の歌、煙をもくもくと吐き出す工場群…。新しい時代への希望と社会の矛盾が混在した時代でした。主人公の「海」の父親は彼女が子どもの頃、朝鮮戦争でLSTの艦長をしていて、機雷にふれて沈没し死亡したという設定です▼LSTとは軍事輸送のための米軍の揚陸艦のこと。1950年6月に始まった朝鮮戦争では、米軍の輸送にあたった艦長以下日本人乗り組みのLSTは約50隻といわれ、米軍の戦車、車両、兵器その他の軍需物資を、佐世保、神戸、横浜から運ばされたのでした。「海」の父親もその一人。いや応もない占領下のGHQの命令と追随する日本政府の方針▼映画では朝鮮戦争については、沈没の場面や、セリフで少し出てくるだけですが、父親の死の背景を知ると、「海」が毎朝、父親の帰ってくるのを願って信号旗をあげる場面は、よけい悲しみがつのります▼朝鮮戦争でアメリカのトルーマン大統領が原爆を使う可能性を示唆したとき、もっとも厳しい抗議に立ちあがったのは日本共産党員たちでした。宮本百合子が東大の講演で怒りをこめて告発し、被爆者でもあった峠三吉は『原爆詩集』をあんで原爆使用に抗議しました▼映画の主題は愛と青春ですが、朝鮮戦争という言葉に記憶にとどめたいあれこれが招来します。





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