2011年8月28日(日)「しんぶん赤旗」
ベトナム 原発計画に懸念
専門家全国会議で相次ぐ
【ハノイ=面川誠】東南アジアで初となる原子力発電所の導入を目指すベトナムで、原発計画への疑問の声が上がっています。建設予定地の南部ニントゥアン省で15〜17日に開かれた第9回原子力科学技術全国会議では、参加者から懸念の声が相次ぎ出されました。ベトナム各紙が伝えました。
「断層がある」
会議でベトナム原子力エネルギー協会のチャン・フー・ファット会長は、建設予定地内に断層があると指摘。「原発の安全性に脅威となる可能性があるなら、予定地を変えるべきだ」と主張しました。
ブルガリアの危機管理専門家、ボゴミル・マチェフ氏は、「原発建設作業を点検できるベトナム人の人材育成が大幅に遅れている」と警告しました。
人材育成の現状は、専門技術者の総数が289人。このうち29人がロシアで、2人がフランスで専門教育を受け、258人がベトナム国内と外国で短期訓練を受けたといいます。
科学技術省原子力安全局のレ・チー・ズン副局長は、法整備の問題点を挙げました。現行法では、首相が建設予定地を承認した後、科学技術省が建設を認可し、産業貿易省が稼働を許可します。
しかしズン氏によれば、国際原子力機関(IAEA)はこれらの権限について独立した規制機関の設立を勧告しており、「ベトナムの現行法はIAEAのガイダンスに反する」といいます。
同氏は、「日本は法制度を整えたが、福島第1原発の事故によって大混乱に陥っている」と述べ、法整備だけでなく厳格な法執行が必要だとの考えを示しました。
大手紙も疑問
これまでベトナムのメディアは、原発の危険性をほとんど報道してきませんでしたが、最近になって大手紙が原発計画に疑問を呈する記事を出し始めました。
トゥオイチェ紙22日付の「原発に気を付けよ」と題した記事は、「もし政府機関が科学者の意見を無視して、計画を擁護するために『すべて検討し尽くした』と主張するなら、主観的な態度だ」と批判しました。
ラオドン紙22日付は、「人材育成は技術選択より困難」との見出しで、複数の専門家へのインタビュー記事を掲載。原発について政府からの情報が少なすぎることや、省庁間の連携不足もあり、人材育成が遅れていると警告しました。
ベトナムの原発計画 2030年までに、国内8カ所に14基(総出力1500万キロワット)の原発を建設する計画。その第一歩としてニントゥアン省に出力各100万キロワットの原発4基(総出力400万キロワット)を建設し、2020年から順次稼働させる方針です。第1期の第1原発(2基)はロシアが受注。第2期の第2原発(2基)は日本から輸出される予定です。
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