2011年8月28日(日)「しんぶん赤旗」

主張

来年度予算

暮らし最優先への転換は切実


 菅直人首相の退陣表明の直前、財務省が来年度予算案の概算要求の「作業方針」を決め、23日に各省庁に提示しました。

 正式な概算要求基準は新内閣発足後に閣議決定されますが、実質的には来年度予算案の編成作業がスタートしています。

 「作業方針」は「政策的経費」について今年度の当初予算から1割の削減を求めています。年金・医療費は高齢化に伴う自然増の要求を認めていますが、「合理化・効率化に最大限」とりくむよう求めています。

米軍と大企業は「聖域」

 「作業方針」は軍事費の大きな割合を占める兵器の後年度負担も米軍再編予算も1割削減の例外にしています。民主党政権は昨年、米軍「思いやり」予算の規模を5年間維持するとアメリカに約束しました。5兆円規模の軍事費は来年度も「聖域」扱いです。

 民主党政権は法人税率の5%引き下げを「確保する」(東日本大震災復興の基本方針)としています。証券優遇税制についても昨年、2年間の延長を決めています。

 財政危機は深刻です。なにより震災復興に全力を挙げなければならないときに、本当に米軍・軍事費と大企業・大資産家減税を「聖域」扱いし続けるつもりなのでしょうか。アメリカと財界・大企業にものが言えず、二つの「聖域」を温存する姿勢を続け、そのしわよせは消費税増税などで被災者を含む国民に押し付ける―。こんな本末転倒のやり方は根本から転換すべきです。

 自民党政権は軍事費と大型公共事業の膨張で財政赤字を積み上げた1990年代後半に「財政危機」を宣言し、「財政再建」に乗り出しました。しかし、その中身は浪費の構造にはメスを入れずに消費税増税や医療費値上げなどの国民負担増を強行し、他方で大企業・大資産家向けの減税を一貫して続ける、まさに自民党流でした。

 その結果が今の深刻な財政危機です。「構造改革」の名による労働法制の改悪が「働く貧困層」を増やし、税収と社会保険料収入の低迷を招いて財政危機に拍車をかけたことも見過ごせません。

 民主党政権は「国民の生活が第一」と公約して政権に就いたにもかかわらず、暮らしを犠牲にする自民党流の「財政再建」を進めています。これは、自民党政権と同様に、結果として財政危機をいっそう深刻にする道です。

 自民党政権が「財政危機」を宣言した95年以降の15年間に、消費税以外の法人税、所得税、相続税などの税収は国内総生産(GDP)比で4%も落ち込みました。逆に言えば大企業・大資産家向けの行き過ぎた減税を是正し、安定した経済成長を取り戻すなら、GDPの4%分の約20兆円規模の税収の確保が可能です。

経済危機打開と一体で

 暮らしの予算を削って帳尻を合わせたつもりになっても経済を悪化させれば財政も悪化します。財政危機の打開は暮らしの再建と一体でとりくんでこそ道が開けるということが大失敗した自民党流「財政再建」の教訓です。

 被災者の生活再建を中心にした復興とともに、財界・大企業の応援から「暮らし最優先」の経済政策に転換すること、二つの「聖域」に抜本的なメスを入れることが切実に求められます。





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