2011年8月26日(金)「しんぶん赤旗」
大阪・泉南アスベスト訴訟
高裁、原告の訴え棄却
原告ら「生命より経済発展か」
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大阪府泉南地域のアスベスト(石綿)紡織工場の元労働者や近隣住民29人と遺族らが、中皮腫や肺がんなど深刻な健康被害を受けた責任は規制・対策を怠った国にあると、計9億4600万円の損害賠償を求めている泉南アスベスト国賠訴訟の控訴審判決が25日、大阪高裁でありました。
三浦潤裁判長(田中澄夫裁判長代読)は、国民の健康を守るうえで危険性情報の提供や必要な規制・対策を怠った国の不作為責任を初めて認めた一審判決を、全面的に取り消し、争点となっていた近隣住民らの健康被害についても賠償請求を棄却しました。
判決は、「厳格な許可制の下でなければ操業を認めないというのであれば、工業技術の発達及び産業社会の発展を著しく阻害する」と述べています。
原告団、弁護団は「国民の生命、健康よりも経済発展を優先させた国の責任を不問に付す暴挙である」「不当判決に抗議する」と声明を発表。
村松昭夫弁護士は「行政の行いをすべて追認し、法的正義の実現と人権救済のとりでとしての裁判所の役割を自ら放棄した判決だ。ただちに上告し、全面解決を求めて最後までたたかい抜く」と述べました。
昨年5月19日の大阪地裁判決は、1959年までに石綿肺、72年に肺がん・中皮腫の発症が石綿粉じん吸引によるものと認める医学的知見が確立されたと認定。粉じんを防止・抑制する局所排気装置の設置や、粉じん濃度測定結果の報告を事業所に義務付けなかった国には、事業所と同等の共同不法行為責任があると断罪しました。
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