2011年8月26日(金)「しんぶん赤旗」
主張
高級官僚の「天下り」
「あっせんない」は通じない
民主党政権には、政官財癒着の根を断つ意思も能力もないということなのでしょうか。癒着の温床である高級官僚の「天下り」で、役所ぐるみの悪質な案件が表面化したのに、官僚まかせの形式的調査で、あっさり手を引く構えです。
舞台は国土交通省。同省の現役幹部である審議官の指示で、所管公益法人のOB人事が決められた疑惑です。日本共産党の塩川鉄也衆院議員の追及に、枝野幸男官房長官が「国交省の政務三役にしっかり調査させる」と約束しました。ところが、大畠章宏国交相は「法違反の再就職あっせん行為はなかった」と決着を図っています。
「政官財」の癒着の根
この天下りは、あまりに異常な状況で行われていました。国交省の九州運輸局次長が今年2月2日付で「日本小型船舶検査機構」に現役出向し、その前日付で同機構に天下りしていた2人のOBが退任。この2人は4月1日付で「海技振興センター」と「原燃輸送」に就職、これにはじき出された天下りOBは6月6日付で「日本冷蔵倉庫協会」へと見事な“玉突き人事”で再就職しています。
それぞれ独立した「法人」でありながら、これらの団体の理事長、理事ポストは、歴代国交省OBが「指定席」として、役所の領分のように扱ってきました。とても偶然とはいえない“玉突き”のシナリオを書いたのはだれなのか。
塩川氏は国会で、衝撃的な事実を明らかにしました。「この人事異動の件で国交省の審議官が海技振興センターの理事長に連絡して、後任を含めた人事を指示した」という、国交省OBの内部告発を突きつけたのです。
国交省は、副大臣を責任者に「調査委員会」を設置し、19日に最終報告をまとめました。当事者の言い分そのままに「関係者と審議官の接触は、あいさつ、報告で、あっせんではない」と結論づけ、内部告発者を“トラブルメーカー”と描くなど、「幕引きありき」のおざなりなものでした。
菅内閣は昨年6月、「退職管理基本方針について」を閣議決定しています。これは天下りの「あっせん」を根絶するという趣旨のものです。官による「あっせん」は国家公務員法違反になるが、そうでなければ法違反にはならない。これを「抜け道」として、従来どおりの天下りが横行しているところに、問題の深刻さがあります。
東京電力福島第1原発事故後には、経済産業省前資源エネルギー庁長官の東京電力への再就職をはじめ経産省と電力会社の癒着が、「安全神話」に立つ野放図な原発推進政策の背景として問題になりました。一部の特権官僚が、国交省ならゼネコン業界、厚労省なら製薬メーカーなど所管業界に天下りし、国民の利益を損ない、税金のムダ遣いを助長している状況を打ち破らなければなりません。
全面禁止しかない
国民全体への奉仕者である公務員が、一部の政治家や財界・大企業のための存在となり、政官財癒着で政治や行政をゆがめる、その「接着剤」となっているのは「企業・団体献金」と「天下り」です。日本共産党は、その即時・無条件の禁止を求めています。
新たに現職高級官僚による天下りあっせんが判明したいま、徹底して追及し、再発を許さぬ対策を実現しなければなりません。