2011年8月25日(木)「しんぶん赤旗」

島田紳助氏の引退

芸能界“闇社会”と根深い癒着


 暴力団関係者との親密な交際が発覚してのタレント島田紳助さんの芸能界引退。一個人のスキャンダルにとどまらない、芸能界と“闇社会”の根深い癒着があらためて浮き彫りになっています。

 島田さんは23日夜の引退表明会見で、暴力団関係者との交際について「トラブルを解決してもらい感謝の気持ちがあった。頻繁にあっているわけではなく、悪いことをしているという認識はなかった」と弁明。「私としては『この程度』なんです」と、深い関係でなかったことを強調しました。

 しかし、島田さんと暴力団との関係は「知る人ぞ知る」ものだったといいます。今回問題になっている暴力団と島田さんの関係を週刊誌で指摘していたノンフィクション作家の森功さんはこう指摘します。「テレビに出演して社会的影響力のある立場にありながら、トラブル解決を気軽に暴力団に頼むこと自体が許されない。しかも突然の引退は、さらに根深い背景があるのではと思わせるものだ。真相をさらに明らかにすることが必要だ」

 芸能界と暴力団の癒着はたびたび発覚しています。2007年には、歌手の松山千春さんが会津小鉄会の祝賀会に出席。08年には、当時の山口組大幹部だった後藤組組長のゴルフコンペや誕生会に歌手や俳優が多数出席して問題になりました。

 「以前は、やくざの行事に芸能人が頻繁に出ていた」というのは、行事に芸能人を招いたことがあるという右翼団体元幹部。「やくざと芸能人は『持ちつ持たれつ』の関係だ。一部の芸能人は、“ご祝儀”がもらえるし、もめ事を解決してくれるからやくざとの関係が切れない。やくざの側は力を誇示するために芸能人を利用する。最近は、批判が強くなって表立ったつきあいは減ったが、水面下の関係は相変わらずだ」

 暴力団との癒着は、個人的なものにとどまりません。山口組の田岡一雄3代目組長は「神戸芸能社」という興行会社を設立し、大物歌手の興行で莫大(ばくだい)な利益をあげたことはよく知られた話です。最近でも「芸能界のドン」と呼ばれる大手芸能プロダクション社長の暴力団との関係が週刊誌などでとりざたされています。

 こうした芸能界の問題点を知りながら、島田さんのような人物を視聴率が取れるからと、無批判に重用してきたテレビ局の姿勢も問われます。

 芸能界だけではなくスポーツ界、経済界、政界と暴力団との癒着は“表社会”のあらゆるところで噴出しています。暴力団との「持ちつ持たれつ」の関係は絶対に許されない。この社会的合意を強めることが求められています。 (森近茂樹)


テレビ自身が甘い体質

 島田紳助さんの引退表明会見以降、テレビはその模様をいっせいに伝えました。しかし、肝心の暴力団との関係への追及はほとんどなく、“引退を惜しむ”式の報道があふれています。

 島田さんは記者会見で「この程度で引退しなければならないんです」と悔しさをにじませましたが、その認識こそが問題だったのです。明らかになった事実―トラブルを解決してくれた暴力団幹部に、やはり暴力団関係者を通して、メールで感謝のメッセージを送る。自分の経営する飲食店でその幹部と「5回程度」会う。芸能人としてあってはならない大問題で、「この程度」「セーフ」ですまされる問題ではありません。物事を暴力で決着付ける暴力団との関係は、けっしてあいまいにできないことです。

 テレビは、事実関係の追及とともに、暴力団との親密な関係が、いかに倫理と道義に反するかを掘り下げるべきです。やくざを面白おかしく扱って日ごろの番組を盛り上げていることも含めて、テレビ自身に暴力団に甘い体質を感じざるを得ません。 (荻野谷正博)





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