2011年8月24日(水)「しんぶん赤旗」
きょうの潮流
8月26日は、フランスの「人および市民の権利宣言」、いわゆる人権宣言が採択された日です。1789年のことでした▼宣言は、「圧制への抵抗」を人の侵されない権利と定めました。長い人間の歴史の中で考えるなら、フランスだけでなく古くから世界中で続いてきた圧制への抵抗に、「権利」の旗印を与えたといえるでしょう▼リビアのカダフィ政権の終わりが近い、と伝えられます。カダフィ氏は、32年前に公職を辞しています。以来、表向きの呼び名は「偉大なる9月1日革命の指導者」。大統領でも首相でもない、一市民です▼一市民が国民の上に君臨する不思議。選挙による代議制を認めない「直接民主制」といいますが、誰かが人々を導き治めなければ国は成り立ちません。“偉大な革命の指導者”と称する一市民が、法にもしばられず、権力をふるう体制ができあがりました▼リビアは、国土の1%しか耕地がない貧しい国でした。1959年に石油を発掘し、アフリカでもっとも豊かな国に変わってゆきます。69年に軍事クーデターで王制を倒して生まれたカダフィ政権も、医療を無料にしたり国営住宅を多く建てたりしました▼それでも国民は、自由を欲しました。虚構の「民主制」ではない自由を。内戦の道をたどり、市民が欧米の介入を求めるなど、エジプトやチュニジアの民主化とは様相が違います。しかし、リビア国民も証明したのではないでしょうか。「圧制への抵抗」は、侵そうとしても侵せない権利なのだ、と。