2011年8月23日(火)「しんぶん赤旗」

主張

特例公債法案

自公に売り渡された「魂」


 赤字国債の発行を可能にして今年度予算の財源を確保する「特例公債法案」の審議が参院で始まりました。

 今年度予算で民主党政権は財界言いなりに法人税率の引き下げを盛り込み、証券優遇税制も延長して大企業・大資産家に減税の大盤振る舞いを図っています。5兆円規模の軍事費を温存し、米軍「思いやり」予算は5年にわたって総額を維持するとアメリカに約束しました。

 他方で国民には、なけなしの年金支給額を削減し、少人数学級の予算を抑え、医療・介護の負担増を計画しています。

子ども手当と取引で

 財界と米軍に奉仕する一方で暮らしに冷たい本末転倒の予算です。それを支える特例公債法案を認めるわけにはいきません。

 民主党は2009年の総選挙で「国民の生活が第一」を旗印に掲げて政権に就きました。個々の政策には後期高齢者医療制度の廃止、子ども手当の創設や高校授業料の無償化など国民の要求を反映したものも含まれていました。

 しかし、国民が政権交代に託した自民党政治を変えてほしいという願いは、つぎつぎに踏みにじられています。沖縄の米軍基地問題をはじめ、暮らしの面でも後期高齢者医療制度の実質存続、消費税の増税計画、TPP(環太平洋連携協定)の参加問題など自民党政治と同じ道に戻っています。

 さらに子ども手当の「廃止」問題です。民主、自民、公明の3党は特例公債法案を成立させる取引材料として、子ども手当の「廃止」で「合意」しました。

 日本共産党は子ども手当などの「現金給付」と保育園整備などの「現物給付」のバランスをとって総合的に子育て支援に取り組むよう主張してきました。子ども手当の議論で必要なのは、こうした子育て支援のそもそも論であるはずです。ところが3党は、もっぱら子ども手当を政局がらみで特例公債法案の取引材料に使って、もてあそんだだけです。

 「3党合意」では現行の子ども手当の支給額1万3000円が、3歳以上については1万円に減額されます。たとえば小・中学生の子どもが2人いる世帯では現行制度と比べて年間でマイナス7万2千円の影響があります。家計が冷え込んでいるときに、多くの家庭に実質負担増を押し付けるやり方です。

 民主党の岡田克也幹事長は09年の総選挙の際に民主党のマニフェストは「魂の結晶だ」と言っていました。子ども手当は「国民の生活が第一」と掲げたマニフェストの看板政策です。“民主党は「魂」を売り渡した”と言われても仕方がありません。

二つの分野にメスを

 財政危機が広がった大きな原因は、軍事費などの浪費と大企業・大資産家に減税の大盤振る舞いを続けてきたことにあります。しかし、民主党政権には米軍「思いやり」予算を含む軍事費にも、大企業・大資産家への行き過ぎた減税にも切り込もうとする姿勢がまったくありません。そのために、今年度予算も財源の4割を赤字国債に頼り、先々の見通しが立たない予算になっています。

 大震災の復旧・復興を支え、暮らしを最優先にした経済政策に切り替えるためにも、二つの分野にメスを入れることが不可欠です。





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