2011年8月19日(金)「しんぶん赤旗」

原発撤退へ 立地拒否した町で

三重県0基 たたかい半世紀

住民投票圧勝 漁協決議 全県にビラ


 日本共産党三重県委員会が津市で開いた党創立89周年記念講演会(7月16日)の中で、三重県内での半世紀にわたる原発反対のたたかいを振り返った山下鮎子・元海山(みやま)町議(69)の報告に参加者から大きな共感の拍手が寄せられました。 (三重県・白瀬総彦)


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(写真)党創立記念講演会で報告する山下鮎子さん=7月16日、津市

 三重県民は県内への原発建設を1基も許してきませんでした。原発推進派のすさまじい札束攻勢や嫌がらせを乗り越えて2000年に立地計画の「白紙撤回」を勝ち取った芦浜(あしはま、旧南島、紀勢町境)のたたかいが記憶に新しいところですが、それ以前から大きなたたかいが繰り広げられてきました。

 中部電力は1963年11月、県南部の3カ所を原発立地候補地として挙げました。芦浜と城ノ浜(じょうのはま、旧紀伊長島町)、大白浜(おおじろはま、旧海山町)です。63年とは日本原子力研究所が茨城県東海村の動力試験炉で日本初の原子力発電に成功した年で、東京電力の福島第1原発も関西電力の美浜原発もやっと計画が動きだした頃です。

集会に励まされ

 三重県は候補地が発表された翌月には、芦浜と城ノ浜でのボーリング調査を許可しました。しかし、大白浜については許可を留保しました。

 山下鮎子さんの報告によると、候補地発表の直後から長島町、海山町の日本共産党組織が反対運動を開始。党三重県委員会もいち早く「県民を放射能の危険にさらす原発の設置に反対しよう」というビラを全県的に配布しています。

 とくに海山町では、大白浜に面した島勝漁協が早々と原発反対を決議。浜に近い矢口浦の人たちは全戸300戸が参加して闘争委員会をつくるなど、とてもボーリングを許可できないような状況が短期間につくられていました。

 64年2月には、日本共産党も加わる原発反対三重県共闘会議と、矢口、島勝の闘争委員会が共同で原発反対海山集会を開催。会場の銚子川河原に約1600人が集まったといいます。集会に励まされた紀伊長島の漁師たちは3日後、長島漁協として原発反対を決議しました。

危険性を訴える

 中部電力は同年7月、芦浜を原発建設予定地に決定しました。芦浜の地元、南島町議会は同年6月に原発反対を決議。紀勢町議会は芦浜決定が発表されたその日に誘致を決議しており、この後、原発反対派と推進派の争いが激化していきます。

 日本共産党三重県委員会は同年9月3日付で「アカハタ」号外を発行。その中で、原発の危険性を改めて訴えるとともに、県当局と中電が補償金をえさに買収を行い、漁民同士を分断して原発反対勢力の分裂を狙っていることを指摘。原発設置反対の一点での団結を強く呼びかけます。

 地域で反対の運動が広がり、また67年4月の知事選に出馬した日本共産党の遠藤陽之助県委員長(当時)が、南島町で現職の田中覚氏の得票を上回った衝撃もあって、田中知事は同年9月、芦浜原発建設計画の「一時断念」を表明しました。

 山下鮎子さんは「長いたたかいを強いられた南島町と比べて、海山町と紀伊長島町の漁民、住民がいち早く原発計画をはねのけることができたのは、海山町に藤田晃三郎氏、紀伊長島町には東百合枝氏という日本共産党の議員がいて、たたかいをリードしたからです」と強調します。

 芦浜での建設計画が行き詰まっていた71年10月に中部電力は、今度は井内浦(いちうら、熊野市)への原発計画を発表しました。

 熊野市には日本共産党の大西譲、伊藤裕両市議がいました。大西議員らは直ちに闘争委員会をつくって反対運動を組織。全国のたたかいとも連携しながら、粘り強い取り組みで原発推進勢力を追い詰めていきました。

 熊野への原発立地も進まない中で国は77年、芦浜を「要対策重要電源」地点に指定。芦浜をめぐる推進派との第二幕の激しいたたかいが始まります。

 このたたかいで、日本共産党の手塚征男氏が南島町に移住立候補し、議席を得て一大反対運動の一翼を担いました。

町民「原発ノー」

 芦浜原発白紙撤回後の2001年、原発推進派は海山町で原発誘致の是非を問う住民投票を仕掛けました。

 結果は反対派が67%を占めて圧勝。推進派は「原発は安全」「町を活性化させる」と金に飽かした宣伝工作を繰り広げましたが、町民は「原発ノー」の意思を明確に示しました。

 芦浜のたたかい、海山の住民投票の勝利は、まさに63年以来の県民のたたかいの集大成でした。

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(写真)1964年9月3日付の「アカハタ」号外

 

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