2011年8月19日(金)「しんぶん赤旗」
主張
「馬毛島」基地計画
ごまかし説明で強行するのか
鹿児島県種子島から12キロ沖の馬毛島(まげしま)に米空母艦載機部隊の離着陸訓練(NLPを含む)基地を建設する計画を地元自治体に押し付ける動きが加速しています。
西之表市など1市3町が馬毛島の軍事化に一貫して反対しているのに、6月の日米安全保障協議委員会(2プラス2=外交軍事閣僚協議)の合意にもとづく計画を政府が押し付けるのは、住民の意思を踏みにじるものです。米軍機の爆音が種子島に及ばないというごまかしの説明に住民は不信と怒りを強めています。
種子島を直撃する爆音
馬毛島から目と鼻の先の種子島には約3万2千人の住民が住み、40キロ先の屋久島にも約1万3千人が住んでいます。馬毛島を米軍の離着陸訓練基地にしたのでは二つの島の住民を爆音被害で苦しめることになります。
神奈川県厚木基地での訓練時の爆音は十数キロ離れた東京都町田市でも「うるささ指数」が「受忍限度を超える」75と測定されるほどです。厚木基地周辺の爆音被害を、西之表市、中種子町、南種子町、屋久島町で構成する「米軍基地等馬毛島移設問題対策協議会」が拒否するのは当たり前です。
重大なのは、防衛省がごまかしの説明で基地化を強行しようとしていることです。防衛省は馬毛島につくる滑走路の向きを北北西と説明しています。これは種子島地域の気象状況からして考えられない向きです。種子島周辺の風向きは冬場に北西からの強い季節風が吹くのが特徴です。航空機は風に向かって飛ぶことで安全を保ちます。種子島空港の滑走路が北西の向きとなっているのはこのためです。それにもかかわらず滑走路は北北西の向きという防衛省の説明がごまかしなのは明らかです。
防衛省が北北西と言い張るのは、北西の向きを認めれば米軍機の爆音が種子島を直撃することを認めざるをえなくなるからです。種子島を直撃しないと地元に説明することで、とりあえず基地化を認めさせようというひきょうでずるい思惑が透けて見えます。
日本共産党の赤嶺政賢衆院議員が「滑走路の方角は今後変わりえるか」と質問したのに対し、小川勝也防衛副大臣は「変更の余地は存在する」(7月27日、衆院外務委員会)と答弁しました。これは重大です。地元が基地化を受け入れたあとで、種子島の滑走路と同じように北西の向きに直すことを予定しているというしかありません。住民へのごまかしが明白な防衛省の「説明」を許さず、基地化の策動をきっぱりと断念させることが重要です。
地元の意思尊重し断念を
「米軍基地等馬毛島移設問題対策協議会」を中心に、馬毛島の基地化に反対する動きは急速に広がっています。日米両政府が「2プラス2」で地元の意思を無視して馬毛島の基地化の方針を決めたことに、伊藤祐一郎鹿児島県知事も抗議しています。鹿児島県内の24町村でつくる「鹿児島県町村会」も地元を支持するとの決議を全会一致で可決しました。
政府は地元の意思を尊重して、基地化の計画を断念すべきです。それこそ憲法の地方自治の精神を生かすことになります。地元の意思に逆らえば日米合意は頓挫するしかないことを政府は思い知るべきです。
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