2011年8月18日(木)「しんぶん赤旗」

主張

野田財務相発言

戦争犯罪の否定は許されない


 野田佳彦財務相が終戦記念日の記者会見で、戦後の「東京裁判」で「A級戦犯」として裁かれた人たちは「戦争犯罪人ではない」と発言し、韓国政府などから「侵略の歴史を否定しようとする不適切な言行」と批判されています。

 野田氏の発言は、侵略戦争を美化する靖国神社への参拝を繰り返した小泉純一郎首相(当時)に対してかつて提出した質問主意書についての記者の質問に答えたものですが、現職の閣僚で民主党の代表選にも出馬予定の野田氏が、終戦記念日という日にこうした発言をすること自体、侵略戦争への反省のなさを示すものです。

靖国参拝をけしかける

 野田氏は、小泉政権時代の2005年10月と翌06年6月にこの問題での質問主意書を提出しています。その中身は、小泉首相が靖国神社への参拝について、「軍国主義を美化するものではない」とのべ、靖国神社に合祀(ごうし)されている「A級戦犯」は「戦争犯罪人であるという認識をしている」と発言したのに対し、それを否定する立場でおこなわれたものです。いわば、いいわけして靖国参拝を合理化しようとした小泉首相に対し、靖国神社に参拝するなら「A級戦犯」は「戦争犯罪人ではない」と認めて、堂々と参拝すべきだとけしかけたものでした。

 そのことは質問主意書のなかで野田氏自身、「A級戦犯」を「戦争犯罪人」と認める限り「戦争犯罪人が合祀されている靖国神社への参拝自体を軍国主義の美化とみなす論理を反駁(はんばく)できない」「(戦争犯罪人でないと認めれば)参拝に反対する論理は…破綻」としていることから明らかです。

 しかし、野田氏が質問主意書のなかで「A級戦犯」が戦争犯罪人ではない根拠としてあげていたのは、「A級戦犯」を裁いた「東京裁判」(極東国際軍事裁判)そのものを否定する立場からの批判や、日本が1951年に講和条約を結んだあと自民党などが強行した国会決議で「名誉回復」されているというもので、自民党などタカ派勢力が繰り返してきたものばかりです。さすがに当時の小泉政権も、日本は講和条約で国際軍事裁判を受諾していると、野田氏の見解に全面同調はしませんでした。

 「東京裁判」で「A級戦犯」やその容疑者として裁かれた、東条英機元首相ら戦争当時の政府・軍部首脳が、2000万人を超すアジア諸国民と310万人以上の日本国民を犠牲にした戦争の責任を問われる立場にあったことは明白です。「東京裁判」は天皇を最初から免罪しているなどの問題はありましたが、日本の戦争犯罪を追及したことは歴史的事実です。

 だからこそ、戦後の日本政府も講和にあたってその裁判を受け入れ、「A級戦犯」は戦争犯罪人であることを否定してこなかったのです。野田氏のような主張が、政府・軍部首脳の戦争責任を免罪し、結局は日本の侵略戦争と植民地支配の歴史を否定することになるのは明らかです。

閣僚の資格が問われる

 野田氏が現職の閣僚であり、次期首相になるかもしれない民主党の代表候補の一人であることは重大です。野田氏は誤った発言を撤回し、閣僚を辞任すべきです。

 野田氏を閣僚に任命した菅直人首相と、民主党の責任も、当然問われることになります。





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