2011年8月17日(水)「しんぶん赤旗」
きょうの潮流
お盆が終わり、各地で送り火の炎が水辺を照らし、山を焦がしました。九州や大震災にあった東北には、舟をつくり、お供え物を乗せて流す地域も多い▼お盆は、中国から伝わってきた盂蘭盆(うらぼん)の行事と、わが国古来の先祖をまつる習わしが合わさって生まれた仏事といいます。盂蘭盆は、あの世で苦しむ死者を供養し救うという仏教の行事です▼わが国で正月とお盆は、先祖をまつる半年ごとの行事でした。いつの時代からか、まつり方が分かれてきたらしく、興味深い。正月は主に豊作を願って神社に参る神祭りに、お盆は寺の墓に参る仏事に▼ところで、先祖を敬おうというわけでもないでしょうが、政界でお盆の間、先祖返りのような発言が相次ぎました。民主党内の、自民党との「大連立」論です。代表選に名乗りを上げている野田財務相。岡田幹事長、前原前外相も…▼「国民の生活が第一」とうたう政権公約の目玉政策を捨て、勢いづく「大連立」論。「自民党政治」の根っこから枝分かれした民主党の、“先祖返り”を促します。もっとも、それは不正確とみる向きがあるかもしれません。辞書によれば、「先祖返り」は次の意味です▼「親に現れていない、先祖の遺伝上の特徴が、子に現れる」。小沢、鳩山、菅の各氏ら民主党生みの親たちも、自民党政治と決別していたわけではないのですから。ともかく、「力合わせて被災者を救おう」とは違う「大連立」論。犠牲者をいたみ送り火を燃やす、人々の気持ちはそっちのけです。