2011年8月16日(火)「しんぶん赤旗」
GDPマイナス成長
生産・輸出は回復の見通し
国民中心の復興こそ必要
内閣府が15日発表した4〜6月期の実質国内総生産(GDP)速報値は3四半期連続のマイナス成長でした。前期より減少幅は縮まったものの、東日本大震災で大きな打撃を受けた個人消費の落ち込みが依然として深刻です。(山田俊英)
需要項目ごとに見ると、最も伸びたのが公的固定資本形成(前期比3・0%増)、つまり公共投資です。震災復興事業などで6四半期ぶりに増加に転じました。民間企業の設備投資は0・2%増。震災で部品供給網が寸断された前期の1・4%減から盛り返しました。
トヨタが前倒し
自動車をはじめ輸出大企業は部品調達にめどをつけ、8月以降、生産回復を本格化させています。トヨタ自動車も震災後いったん半減した国内の車両生産を8月に震災前とほぼ同じ1日あたり1万3000台に回復。当初、9月としていた生産回復を前倒しで進めています。
前期比4・9%減と大きく落ち込んだ輸出はどうでしょうか。四半期ベースで大幅減となりました。しかし、月ごとに見ると、前年同月比の減少幅は4月の12・7%減から縮まり続け、6月は1・1%減。震災後の落ち込みから順調に回復しています。
7〜9月期について民間研究機関は生産、輸出が拡大し、プラス成長になると予測しています。
その一方、国民の生活は深刻です。個人消費を示す家計最終消費支出は前期比0・1%減と3四半期続けてマイナスとなりました。
6月の完全失業率は2カ月ぶりに上昇しました。加えて東京電力福島原子力発電所事故による農産物の出荷制限や風評被害が農家の営業とくらしを直撃しています。このままでは大企業の生産や輸出が回復しても、国民生活の再建は見通しがつきません。
消費税増税に道
政府の東日本大震災復興対策本部が7月29日に決めた「復興の基本方針」は財界流の成長戦略を盛り込み、「自由貿易を推進」という文言で環太平洋連携協定(TPP)参加を進める方針も示しました。復興財源については「基幹税などを多角的に検討する」として消費税増税に道を開きました。
消費税増税は被災者の負担を増やす最悪の財源調達です。3期連続マイナスとなった個人消費をさらに冷え込ませ、日本経済をさらに出口のない閉塞(へいそく)状況に追い込むことになります。4〜6月期GDPやその後の統計指標は大企業が着々と生産を回復させる一方、国民生活の再建にはまだ見通しが立っていないことを示しています。大企業に社会的責任を果たさせ、過剰にため込んだ内部留保を復興に活用することが求められます。
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