2011年8月13日(土)「しんぶん赤旗」
主張
原発作業員
「使い捨て労働」で収束できぬ
東京電力福島第1原子力発電所の事故発生から5カ月。構内では異常な高放射線量の区画が発見されるなど、収束に向けた作業は困難を極めています。
放射線に被ばくしながらの労働は急性・晩発性の健康被害をもたらす危険が高く、労働安全衛生法にもとづき定められた被ばく線量の上限を超えた労働者は、作業に従事できなくなります。末端の下請け労働者を含め、一人の健康被害も生まぬ厳格な安全管理体制を築かなければ、原発の収束そのものがおぼつかなくなります。
犠牲が前提の下請け
もともと原子力発電所は、一握りの電力会社社員とこれを支える大量の下請け労働者という、ゆがんだ構造で維持されてきました。福島第1原発では事故前、約1000人の東電社員にたいして9000人を超える下請け労働者が働いていました。
通常時の原発の運転は、原子炉や機器の制御を集中管理で行うためそれほど多くの人手を必要としません。しかし、原則13カ月に1回行う定期点検のさいには、大量の労働者が必要になります。そのときだけ雇われる派遣や「請負」の労働者が集められます。原子炉内の計測装置や汚染された配管の点検・修理、放射性ヘドロのかき出しなど、被ばくの危険の高い作業は、主としてこれらの労働者が担っています。
日本弁護士連合会が都内で開いた原発労働問題のシンポジウムでは、福島県いわき市の日本共産党市議、渡辺博之氏が、下請け労働者の実態を告発しました。重層的下請け構造は6次、7次にまで及び、東電は労働者1人当たり5万〜10万円の日当を支払っているのに、中間搾取され、末端の労働者が受け取る日当は6500〜1万2000円程度、「過酷な状況のなか被ばくしながら働いても何の補償もない」といいます。
東電は事故後も、事故前と同じ手法で労働者を集め、収束作業にあたらせています。3月24日には、地下たまり水で下請け作業員らが被ばくしました。作業前の放射線量測定もせず、危険性を注意することもなしに突入させていました。作業員の安全など二の次です。
政府は事故後、緊急時の被ばく上限を大幅に引き上げ、技術者の不足を理由に、福島第1原発での被ばく線量を「別枠」扱いにしようとする動きまであります。
事故発生から高線量の被ばくをした労働者が多数いるのに、内部被ばくの検査はすすんでいません。下請け会社は500以上にのぼり、東電はだれが働いていたのかも把握しきれていません。離職して連絡がとれない143人をはじめ、800人近くが被ばく線量の検査すら受けられずにいます。まさに「使い捨て」労働です。
廃炉へ体制整えよ
長期にわたる廃炉までの作業工程では、さらに多くの技術者、作業員の力が必要です。全国的な技術者、作業員のひっ迫が懸念されており、確実な体制を整えることが強く求められています。
個人線量管理の徹底、中間搾取をやめさせ人間らしく働ける労働条件への改善、被ばく労働者の健康管理と補償などが不可欠です。東電のずさんさは許されません。政府が厳格に指導し、労働条件と労働者の安全衛生を守らせていくことが責務となっています。