2011年8月12日(金)「しんぶん赤旗」

福島原発事故による放射能汚染から、子どもと国民の健康を守る対策を

――徹底した調査、迅速な除染、万全な健康管理を求める

2011年8月11日 日本共産党


 東京電力福島原発事故によって、大量かつ広範囲に放射性物質=「死の灰」が放出され、国民の放射能への不安が広がっている。とりわけ、放射能への感受性が高い子どもの健康を守ることは、日本社会の大問題である。

 放射能汚染の実態を正確に把握し、その実態とリスクを国民に正直に明らかにし、その被害から国民の命と健康を守るために可能なあらゆる対策をとるのか、放射能汚染の深刻な現状を国民から覆い隠すという態度をとるのか、政治の姿勢が問われている。

 放射能による健康被害は、急性障害だけでなく、晩発性障害がある。放射線被ばくは、少量であっても、将来、発がんなどの健康被害が起きる危険性がある。放射線被ばくの健康への影響は、「これ以下なら安全」という「しきい値」はなく、「少なければ少ないほど良い」というのが放射線防護の大原則である。

 現在の科学・技術では、原発から外部に放出された放射能を消去することも、減らすこともできない。しかし、汚染された土壌を取り除くなど放射性物質をできる限り生活環境から切り離すなどの措置をとることで、人間があびる放射線量を下げることはできる。

 放射能の実態を正確かつ系統的に調査し、最大限の除染を行い、被災者の健康調査と管理を行うことが求められている。

 福島第1原発から放出された放射性物質は、「ウラン換算で広島型原爆20個分」(児玉龍彦東京大学アイソトープ総合センター長 衆院厚生労働委員会参考人質疑)という見解も出されている。今回の事故の重大さとその被害の深刻な実態をふまえるなら、この取り組みは、迅速性が求められるとともに、子どもと国民の命と健康を守る一大事業として、長期間継続されなければならない。

 以下の点について、政府がただちに対策を強化し、本腰を入れた取り組みをすすめることを求める。

1、国の責任で放射能汚染の実態を正確かつ全面的に把握する調査を系統的に実施する

(1)放射線量の総合的で系統的な調査を行う

 きめ細かく、系統的な放射線量・放射能汚染の調査を実施し、放射能汚染の状態を正確に把握することは、国や自治体が放射線防護の体制を整えるうえでの大前提である。

 ――(住民のための汚染マップ)福島県をはじめ放射能汚染が心配されるすべての地域を対象に「放射線量等分布マップ」(放射能汚染マップ)を、早急に作成する。放射線量が高い市町村では、住居ごとに測定し、「私の家はどうなっているか」などについて、住民がわかるようにする。空中放射線量や土壌汚染など、放射能汚染の実態を把握するモニタリング調査を系統的に実施する。

 ――(子どもが近づく場所、ホットスポット対策)面的な調査とともに、学校や幼稚園、保育園、通学路、公園など、子どもが近づく場所、側溝など「ホットスポット」になりやすい場所を集中的に調査する。

 ――(自治体への支援体制)福島県をはじめ放射能汚染の不安が住民から出されている各自治体が、徹底した放射能汚染調査を行えるよう、専門家の派遣、相談体制、十分な財政支援など、国の支援体制を早急に整える。

(2)国の責任で、都道府県が行っている食品検査体制を抜本的に強化する 

 ――(検査機器と体制の整備)食品の検査は、厚生労働省が都道府県に行わせているが、検査機器も体制も足りないために、実態の正確な把握には程遠い状態である。自治体まかせにせず、国の責任で、民間の能力も活用し、最新鋭の検査機器を最大限に確保して、検査体制の抜本的強化をはかる。

 ――(暫定規制値の厳守・見直し)政府が、食品に関する暫定規制値を定めている以上、それを超える食品を市場に絶対に流通させないことは、政府の最低限の責任である。同時に、科学者、専門家、生産者、消費者などの意見をふまえ、暫定規制値を検証し、必要な見直しをたえず行っていくことが必要である。

 ――(生産者に損害を与えない万全の措置)放射能に汚染された農産物、水産物を市場に流通させないための出荷停止などを効果的に行うためにも、放射能汚染に責任のない生産者への迅速な賠償が不可欠である。国が、買い取りなどを含め、生産者に損害を与えない万全の体制をとることを保障すべきである。その賠償にかかる経費は東京電力に負担させる。

2、放射能汚染の規模にふさわしい除染を迅速にすすめる

(1)除染は、住民合意で計画をつくり、国が全面的に支援する

 ――(除染をすすめる大原則)除染にあたっては、(1)国が責任をもって住民に正確な放射能汚染と、そのリスク、除染方法を示し、(2)それぞれの地域の除染計画と方法は住民の納得と合意で決め、(3)その実施や財政的な手当ては、自治体や地域の取り組みを国が全面的に支援する――ことを大原則にするべきである。

 除染にあたっては、緊急除染とともに、大規模で長期にわたる除染の両面で、国が全面的に責任を負って推進する必要がある。

(2)放射線量の高い所、子どもに関する施設や場所の緊急除染をすすめる

 ――(緊急除染を行う)調査で汚染程度が高いところが判明次第、ただちに除染の作業を行う。乳幼児、子ども、妊婦の被ばくを最小限におさえるために、学校、幼稚園、保育園、公園、産院など関連施設や通学路などの線量低減・除染を優先的に行う。

 ――(自治体への支援体制)各自治体が取り組んでいる除染の状況を国が把握するとともに、財政負担はもとより、除染に対する専門家の派遣、相談体制など、国の支援体制を抜本的に強化する。除染方法についても専門家などの知見を結集し、効果的にすすめることができるようにする。

 ――(自主的活動への支援)住民や父母による自主的な除染活動には、機材の貸し出しや除染方法、内部被ばくを避ける作業方法などの相談や援助を各自治体が行えるよう、国が支援する。

(3)大規模で長期にわたる放射能調査・除染に必要な体制を整える

 福島原発事故で、大量の放射性物質が広範囲に拡散しており、調査と除染の取り組みは、大規模かつ長期にわたるものになる。

 ――(放射能調査・除染推進センターの確立)福島原発事故で求められている放射能汚染の実態調査と除染は、規模の面でも、その方法についても、かつて経験したことがない取り組みである。政府は、この課題を国民の命と健康を守る一大事業として位置づけ、責任をもって取り組むことが必要である。

 そのために、科学者、専門家、技術者、民間企業などの知恵と力を総結集し、放射能汚染の実態を全面的、系統的に調査し、除染を推進する強力な特別の体制(放射能調査・除染推進センター・仮称)をすみやかにつくる。

 この体制をつくるさいには、東電から研究費などの便宜を供与され、いまだに「安全神話」をふりまいている「原子力村」の「専門家」はかかわらせない。

 ――(大規模な放射能汚染から子どもと国民を防護する緊急の法整備)いま求められているのは、福島原発事故で飛散した大量の放射性物質を除去し、人間の生活からできる限り「切り離す」ことであるが、このような広範囲の放射能汚染は、現行法(放射線障害防止法など)では想定されていない。大規模で長期期間継続する除染をすすめるための緊急の法整備を行う必要がある。

3、避難者への支援を抜本的に強化する

 ――(避難先の確保など生活支援)放射線測定によって、一時的な避難が必要になる場合には、安定した避難先の確保をはじめ生活支援に万全の体制をとる必要がある。

 ――(自主避難にも賠償、子ども・妊婦に配慮)住民の判断による、いわゆる自主避難についても、必要な生活支援と東京電力による賠償が行わなければならない。とくに、子どもや妊婦の避難には特別の配慮が求められる。

4、内部被ばくを含めた被ばく線量調査をはじめ健康管理をすすめる

 ――(被ばく調査への全面支援)福島県は、200万県民全員を対象に、健康調査を実施し、長期間にわたって放射線被ばくの影響を調べることを決めている。この調査は、きわめて重要であるが、ほんらい、国の責任で行うべきものであり、必要な財政の保障など、国の全面的な支援が必要である。内部被ばくの検査には、ホールボディーカウンターなど特別の設備と医師や専門家が必要になる。国が体制を整えるよう最大限の措置をとる。

 ――(作業員の健康管理)福島原発の危機収束のために現場で働いている作業員の健康と労働環境を守るのは、国の責任である。東京電力まかせにせず、国が責任をもって、末端の下請け労働者を含めて、すべての作業員の内部被ばく調査と健康管理が実施されるようにする。





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