2011年8月9日(火)「しんぶん赤旗」

侵攻→「現地は歓迎」 特攻→「自ら志願」

侵略美化授業の勧め

自由社・扶桑社の教師指導書


 侵略戦争を美化・正当化した育鵬社の歴史教科書を、一部の教育委員会が採択しています。同じく侵略美化の自由社版教科書とともに、その内容に批判が高まっています。両社の教科書はどのような授業を教師にさせようとしているのか。現在使われている自由社版歴史教科書の教師用指導書と、育鵬社版の前身である扶桑社版歴史教科書の教師用指導書から探ってみました。 (高間史人)


写真

(写真)育鵬社(左)と自由社の歴史教科書

 扶桑社版と自由社版の歴史教科書は日本の侵略戦争を「大東亜戦争」と呼び、「アジア解放のための戦争」「自存自衛の戦争」と描き出しています。両社の教師用指導書はその意図をより鮮明にしています。

 指導書の内容は両社ともほぼ同一です。例えば、アジアへの日本の侵攻については次のように授業することになっています。

 「日本軍が進撃してきた時、東南アジアの現地の人々はどのような態度で日本軍を迎えたでしょうか」と教師が問いかけ、四つの選択肢を示します。生徒が選ぶべき「正解」は「歓迎し、協力した」です。

 さらに太平洋戦争開戦時の授業では、「日本の戦争目的は何ですか」と問いかけ、生徒に「自存自衛」と答えさせるようになっています。

 戦争末期に、飛行機による体当たり攻撃をさせて多くの兵士が犠牲になった「特攻隊」についての授業は、さらに侵略戦争美化の様相を強めています。

 「沖縄を救うため、日本は歴史上、例を見ない作戦を展開しました」「特攻隊員の多くは若い青年でした。皆、死を覚悟して志願したのです」と教師が説明。「特攻隊員たちが生きて帰れない作戦に自分から志願したのは、なぜでしょうか」と問いかけたあとで、資料として特攻隊員たちの遺書を生徒に読ませます。

 遺書には「清(自分の名前)は微笑んで征きます。出撃の日も、そして永遠に」「今かぎりなく美しい祖国に、わが清き生命を捧げ得ることに大きな誇りと喜びを感ずる」と書かれています。

 侵略戦争のため青年に命を犠牲にさせたことを美化するものです。

 教師用指導書は、教科書会社が自分の社の教科書を使う教師の授業の参考に作成したものです。育鵬社版や自由社版の教科書が採択された地区では、このような授業が推奨されることになります。


 扶桑社、育鵬社、自由社 侵略戦争を美化する「新しい歴史教科書をつくる会」(つくる会、現在は藤岡信勝会長)は2001年と05年に扶桑社から歴史と公民の教科書を出しました。

 しかし、06年に八木秀次元会長らが同会を脱退。同氏を理事長とする日本教育再生機構ができると、扶桑社と「つくる会」は絶縁しました。「つくる会」側は09年に自由社から歴史教科書を出しました。

 教育再生機構側は教科書改善の会を結成。扶桑社版教科書を「継承する」として今年、育鵬社から教科書を出しました。





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